2005 Fiscal Year Annual Research Report
株式会社における議決権の配分と企業金融・企業統治との関係について
Project/Area Number |
17730069
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 貴仁 神戸大学, 法学部, 助教授 (30334296)
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Keywords | 一株一議決権 / 証券設計 |
Research Abstract |
日本法における株主間の議決権配分にする法規制の変遷を主な対象として研究活動を行った。明治23年旧商法・明治32年商法の施行前後を出発点とし、2005年に成立した会社法までの立法の変遷を、経済・社会情勢の変化と関連づけながら分析を行った。その結果、明治初期の会社で大株主の議決権を制限することが一般的であった背景には、そもそも、会社の経営機構が未成熟で、大株主の議決権を制限する以外に少数株主の利益を保護する手段が無かったという法制度上の不備が存存したことを明らかにすることができた.その根拠としては、明治23年旧商法・明治32年商法の施行により会社(経営者)と株主の間に一応のルールが設定されて以後、株主間の議決権配分が急速に一株一議決権に収斂していったという事実を挙げることができる。また、昭和13年商法改正によって無議決権株式が導入された背景には、株式会社の議決権を利用した企業結合・企業提携の促進という経済的な要請が存在したことを明らかにした。以上の考察から、議決権配分に関する法規制には、議決権の行使に関する問題、議決権の数に関する問題、議決権の移転に関する問題という複合的な要素が含まれていることが明らかになった。このような歴史的な分析の一方で、経済学の知見を利用した分析では、一株一議決権原則に従った議決権配分が会社関係者全体にとって望ましい議決権行使と議決権の移転につながる可能性が高いという結論を得た。以上の歴史的な考察と理論的な考察を踏まえ、最近の会社法改正を分析し、法律の条文上に見られる議決権配分・支配権配分の柔軟化に対して何らかの規制の必要性を指摘したのが、「株主間の議決権配分(1)-一株一議決権原則の機能と限界-」法学協会雑誌123巻1号121頁である。
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Research Products
(1 results)