2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境侵害および知的財産権侵害訴訟における民事手続法上の侵害抑止手段についての研究
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17730075
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
金 炳学 福島大学, 行政政策学類, 助教授 (40350417)
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Keywords | 民事手続法 / 知的財産権侵害差止訴訟 / P2Pファイル交換 / 訴訟物の特定 / 執行方法 / 核心説 / ドイツ法 / 韓国法 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は、まず、前半期において、本研究の研究目的である、知的財産権侵害差止訴訟における差止請求の範囲の特定および強制執行方法についての諸外国の判例・学説について分析・検討につき、後掲の研究成果一覧にある論文を公表した。本論文においては、近年、インターネットの活用とこれに起因する著作権侵害についての、研究の一環として、P2P形式のファイル交換サービスによるナップスター型の著作権侵害事件につき、民事手続法の観点から先の差止判決を潜脱する侵害行為に対する実効的な抑止手段としての抽象的差止請求の是非について検討を加えるとともに、訴訟物の特定と執行手続について、実効性を高めるべくドイツ、ヨーロッパにおいて、判例通説が採用している核心説について詳細に検討しつつ、これをインターネットの特徴にあわせて再構成し、特定のメルクマールを基準に差止請求を適法とする理論的基礎を示すとともに、民事訴訟実務における迅速性生、通用性を考慮し、執行手続を柔軟化することとして、対応することが有効である旨、論証をした。ファイル交換サービスによる知的財産権侵害事件については、このほかに、グヌーテラ型のウィニーなどの被害が深刻化しているが、これに対する法的対応としては、まず、ナップスター型ファイル交換を民事司法において差止めの対象とし、グヌーテラ型ファイル交換システムについては、民刑事の両システムからの対応が必要になると考えられる。これについては、前述した論文において、その技術的可能性について、今後の方向性を示している。報告者の検索によると、ファイル交換システムに対する民事手続法側からの研究は、本論文が、現在、唯一のものである。本年度後半期においては、前半期の基礎的な研究をとおして得られた研究成果をもとに、インターネットやユビキタスにおいて、同様の問題を抱えている、韓国民事手続法における対応方法について検討する素材として、後掲研究成果に示された翻訳資料を公表し、ドイツ・日本・韓国の3力国にまたがる民事手続法の比較法的研究の可能性及び有効性について、研究をすすめた。本研究において、得られた研究成果については、今後、研究会、シンポジウム、学術誌などにおいて報告をすすめると共に、裁判外紛争処理制度(ADR)の有効的活用方法についても、研究を重ねたい。
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Research Products
(4 results)