2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730076
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
八田 卓也 九州大学, 大学院法学研究院, 助教授 (40272413)
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Keywords | 自己に不利な陳述 / 主張共通の原則 / 弁論主義 |
Research Abstract |
比較法的分析作業の前提として、日本法の現状を正確に把握するため、判例((1)最判昭和27年11月27日民集6巻10号1062頁、(2)最判昭和41年9月8日民集20巻7号1314頁、(3)最判平成9年7月17日判例時報1614号72頁)・学説を客観的に位置付ける作業を行った。 その結果、判例については、(1)判決が、傍論として抽象的に主張共通の原則に相当する法理を説示しており、(2)・(3)判決が、主張共通の原則に親和的な判示をしているものの、(1)判決は、双方が自己に不利な事実を主張し互いに争っている場合については言及していないこと、(2)・(3)判決は、すでに証拠調がなされている事案において、その証拠調の結果を斟酌すべしとした事案であり、双方が自己に不利な事実を主張し互いに争っている場合には証拠調をしていずれの主張が正しいかを確定するべきであると判示したとまではいえないこと、から、判例の立場が、「双方が自己に不利な事実を主張し互いに争っている場合には証拠調をすべきである」という法理を含有するものとしての「主張共通の原則」に従ったものであるとまでは評価できないとの位置付けが可能であるとの成果を得た。 他方、学説においても、双方が自己に不利な事実を主張し互いに争っている場合には証拠調をすべきである旨を明確に述べているものは、兼子説以外にはほとんどなく、一般的に説かれる主張共通の原則の外延が不明確であることが明らかとなった。 以上の帰結は、各地で収集した文献の閲読、および各地で行った研究・討論会の結果として得られた成果である。
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