2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境をめぐる「政策相互の調整システム」の基本構造に関する研究
Project/Area Number |
17730090
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
及川 敬貴 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助教授 (90341057)
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Keywords | 国家環境政策法 / 環境諮問委員会 / 環境保護庁 / 紛争マネジメント / 省庁間調整 / 順応管理 / リスク社会 |
Research Abstract |
平成18年度は、アメリカ合衆国へ赴き、現地調査を実施した。合衆国では、ワシントンDCにて、EPA(環境保護庁)のスタッフへのインタビューを実施するとともに、ホワイトハウスのCEQ(大統領環境諮問委員会)のスタッフへもインタビューを実施した。また、同地にて、精力的に各種文献資料の収集を行った。これらの調査を通じて得られた情報を分析し、次のような基礎的な知見を獲得した。 (1)アメリカでは、環境をめぐる権限が分散している以上、省庁間紛争の発生は当たり前であるという「ものの見方」が存在していること。それがゆえに同国では、紛争の発現に伴って生じるダイナミズムやイノベーションを享受しうるようにする一方で、紛争が激化した場合には、それを「調整」するという対処法を選択している (2)アメリカでは、(1)の「ものの見方」と「調整」という手法を軸とする、環境「紛争マネジメント」とでもいうべき法システムが構築・運用されていること。そこでは、事業実施官庁の独走を「まったく許さない」のではなく、それを「簡単には許さない」システム運用がなされている このような法システムを「優柔不断である」として非難することは容易い。だが、世の中はいわゆる「リスク社会」へ突入し、環境問題そのものが複雑化の一途を辿っている中で、明快な基準を設定し、それに依拠して解決しうるといったような単純な当事者間紛争は限られてきている。こうした時代状況に鑑みれば、アメリカの法システムは、いわゆる「順応管理」の考え方を制度化した具体例として評価されるべきものと考えられる。
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Research Products
(1 results)