2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730092
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 拓道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教授 (20333586)
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Keywords | フランス / 福祉国家 / 連帯 / 社会的排除 / 労働時間短縮 |
Research Abstract |
1 従来フランス福祉国家の原型は、第二次大戦後のP.ラロック報告により与えられたとされてきた。本研究では、B.パリェら近年のフランスの研究状況を踏まえ、第三共和政期の「連帯」思想および戦間期のコルポラティスム論に、戦後フランス福祉国家の思想的・制度的基礎を見出した。(研究成果『年報政治学』所収論文)。(1)「連帯」思想は、中間集団による「リスク」共有の原則に基づき、職業集団自治を国家が補完するという制度構造を導く。(2)戦間期のコルポラティスム論は、生産手段の自主管理を目指す労働組合と、産業近代化をめざす資本家層の双方から唱えられる。(3)両者を調停する改革官僚グループの主導により、戦後に労使からなる職域集団自治を基盤としたフランス型福祉国家が形成された。 2 1980年以降の福祉国家再編期において、フランスは自由主義・社会民主主義レジームと比較して改革の「凍結」状態にあるとされる。本研究では、フランス福祉国家の再編過程を「連帯」原理の問い直しという思想的議論と対応させて検討し、その特徴を明らかにした(研究成果『社会政策学会誌』および『法政論集』所収論文)。(1)1980年以降の福祉国家「危機」論は、財政危機と社会支出削減を主張する右派勢力と、社会統合の機能不全による「排除」を問題化する勢力から、異なる形で唱えられた。(2)両者は労使団体以外の非営利団体・人道アソシエーションなどの中間集団を積極的に組み込むことで福祉国家を再編しようとする意図で共通する。参入最低所得(RMI)、地域コミュニティ政策は、両者の対抗関係の中で導入された。(3)これらと並んで、雇用配分と非市場的な活動領域(「連帯経済」)の活性化を目指す一部社会党・緑の党勢力により、労働時間短縮が導入された。 3 以上のフランス福祉国家の形成・再編過程と、その背後にある規範的秩序像をイギリスと比較した(日仏政治学会にて報告、『法政理論』所収論文にて公表)。
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