2006 Fiscal Year Annual Research Report
オランダにおけるポピュリズム政治の出現-その背景・構造・イデオロギー
Project/Area Number |
17730099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
水島 治郎 千葉大学, 法経学部, 助教授 (30309413)
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Keywords | オランダ / 新右翼 / イスラム / 移民 / 寛容 |
Research Abstract |
研究2年目の本年度は、昨年度中に収集できた資料を解読するとともに、さらなる資料の収集と検討、複数国間の比較研究を行った。特に2006年に行われたオランダ総選挙において新たな新右翼政党が参加し、かなりの得票を獲得して議会に進出したことは、2002年のフォルタイン党の躍進と並んで特筆すべき事態であり、オランダにおける移民問題が政治的な対立軸として「固定化」しつつあるのではないかとも思われたため、このようなオランダの政治社会の変容を、比較の観点を交えつつ明らかにすることを試みた。比較のさい、特に念頭に置いたのは隣国ベルギーである。ベルギーでは新右翼政党であるブラームス党が政党システムの一翼を担い、自治体レベルでも強い影響力を誇っている。実際2006年9月にはベルギーに渡航して資料収集を行い、ブラームス党について検討することで、オランダの新右翼政党とブラームス党との比較を行う枠組みを作ることができた。そこで明らかになったことは、ブラームス党はネオナチとのつながりや、その「暴力性」ゆえに既成政党からの排除が徹底して行われているが、オランダの場合は新右翼政党は「自由」「人権」といった啓蒙的価値を前提とし、それらの西洋的価値を認めないイスラムを排撃するという「ソフトな排外主義」であり、それゆえに既成政党からも容認され、政治社会へ浸透をある程度果たしているということであった。そもそもオランダは、活性化した「市民社会」が存在し、福祉・環境・まちづくりなどさまざまな分野で民間非営利団体が活動しているが、移民排除の動きは多くの場合「市民社会」レベルの反外国人感情と連動していることも否定できない。今年度の研究は、ベルギーと比較しつつ、このようなオランダの新右翼の政治的・社会的基盤を明らかにした点でも有益であり、最終年度である来年度の研究の仕上げへの道筋をつけることができた。
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Research Products
(1 results)