2005 Fiscal Year Annual Research Report
医療と政治制度-地域医療ガヴァナンスの先進諸国(英・日・瑞)比較分析-
Project/Area Number |
17730101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小舘 尚文 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 研究拠点形成特任研究員 (50396694)
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Keywords | 医療政策 / イギリス政治 / 福祉国家 / スウェーデン政治 / 公共政策 / 中央地方政府間関係 |
Research Abstract |
初年度の平成17年度は、インタビュー調査、データ収集およびアンケートの実施などを行った。特に、地域医療ガヴァナンスで問題となる「地域」について、対象とする三ヶ国でいかなる制度上の違いがあるのかという点が調査の核となった。医療制度の政策決定に「地域」がどのような機能を持ちうるかについて考える必要があったためである。医療のように、政策実施や具体的なサービスが重視される政策分野では、関係主体の政策策定および実施時点での関与の度合いにも国ごとで大きな差が見られるため、単なる公式上の政治制度との関連を見ただけでは問題解決に向けた有益な視点は得られないことが多い。 そのため、まず英や瑞における医療政策への政治の関与について、二次文献、インタビュー、公文書を通じた分析を行った。さらに、税拠出の医療制度を持つこの二カ国とは異なり、政治家の説明責任が明確ではない日本については、政治家や関係官庁といった関係主体の認識を問うため、都道府県知事を中心としたアンケート調査を行った。 こうした分析結果は科研報告書の中に収めることとするが、以下にその要約を簡潔に述べることとする。先進諸国は現在、高齢化や経済成長の鈍化といった共通の制約状況に置かれ、医療費の抑制への関心が高まっている。そうした圧力の中で進められる改革について、税方式医療システムを持つ英・瑞と比較した場合、政治・行政、中央・地方の役割分化が進んでいない日本では、各主体の説明責任はまだ明確に認識されていない。政治家の関与および選挙が政策に影響を及ぼす英・瑞では、改革の停滞につながることもある一方で、瑞では「地域」のあり方や、中央地方政府間関係を変化させる引き金にもなりうることがわかった。アンケートでは、全都道府県のうち15県の知事、13府県庁の担当課から回答があり、地域利益を体現する行政区での医療への取り組みに対する意識をまとめることができた。 (799字)
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