2006 Fiscal Year Annual Research Report
前期サラマンカ学派の政治理論-カトリック的近代国家論の生成と展開-
Project/Area Number |
17730105
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
松森 奈津子 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (80337873)
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Keywords | サラマンカ / ビトリア / 後期スコラ / 初期近代 / 政治思想 / スペイン / 主権国家 / カトリック |
Research Abstract |
本研究は、従来国家理性論や社会契約説と比べて注目されることの少なかった前期サラマンカ学派(c.1526-c.1576ビトリアからマンシオまで)の権力・国家論に着目し、それが近代主権国家秩序の形成に与えた影響を検討するものである。すでに前年度において、国内外の資料調査・収集作業をほぼ終えていたため、本年度は、主として二つの目的--(1)時事問題の考察を通じて示された同学派の世俗権力観の全体像を明らかにすること、(2)同時代の諸理論との異同を考察することによりその地位と意義を模索すること--に沿って、当該研究をまとめる作業に着手した。 具体的には、これまでの研究を一冊の著作として体系的にまとめ、本邦の学界にその成果を還元すべく、草稿の執筆にとりかかった。その際、最新の先行研究を調査する必要のある部分や、再度典拠の確認を要する部分があったため、図書購入、図書館相互貸借、資料閲覧等により、これらの不足を補った。同時に、諸研究者にディスカッション・ペーパーとして著作の草稿を配布し、有益なコメントを受けた。以上の作業の成果発表は、来年度以降に見込まれている。 今年度の成果発表としては、まず、前年度までに最終作業段階に入っていたスペイン語書籍の著作(別記)が公刊されたことがあげられる。その内容の大半は、現在執筆中の著作に反映されることによって、本邦においても公にされる予定である。また、第31回社会思想史学会(10月22日、於法政大学)では、報告「アンデスのアヴァンギャルド」の司会をつとめた。ここでは、自身の研究課題の観点(征服/スペイン側)と異なる視座(非征服/インディオ側)からの報告と、それをめぐるディスカッションを通じて、本研究課題との関連で有効な知見を得ることができた。
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