2006 Fiscal Year Annual Research Report
幕末明治期日本におけるオランダ国際法学受容の政治思想史的意義
Project/Area Number |
17730109
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大久保 健晴 明治大学, 政治経済学部, 講師 (00336504)
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Keywords | 政治学 / 日本政治思想史 / オランダ法学 / 万国公法 / 西周 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幕末オランダ留学を通じて西周と津田真道がもたらした「万国公法」論の検討を中心に、徳川期以来のオランダ法学受容が近代日本における政治意識の形成・転回過程で果たした役割の政治思想史的意義を解明することにある。 2年目にあたる2006年度は、まず夏期にオランダに赴き、ライデン大学図書館を中心に史料調査を行った。今回の調査では、西周がオランダから持ち帰った蔵書目録にも残されている、T.M.C.AsserのHet bestuur der buitenlandsche betrekkingen volgens het Nederlandsche staatsregt(1860)など、フィッセリングと同時代の法学者達の国際法論を広く収集するとともに、フィッセリングが視野に入れていた当時のオランダを取り巻く国際関係について検討を進めた。 また上記の作業と平行して、近世日本政治思想史及び東アジア思想史の視座から、徳川期以来の蘭学を機軸とする法学の導入と国際秩序観の形成について検討すべく、国内での史料調査に従事した。特に具体的には、蛮書和解御用の宇田川濤(輿斎)翻訳『和蘭律書』(断罪篇六冊と案罪篇八冊)など、天保年間、老中水野忠邦の命による翻訳事業に注目し、オランダでの史料調査を通じて手に入れた原典との比較を行うことで、幕末洋学者がオランダ法学に接触する以前の、徳川後期ヨーロッパ法学受容について解明を試みた。近世日本における西洋法体系・法学受容の出発点へと遡る、これらの検討によって、蘭学を媒介に西洋法体系の限定的な摂取から、ペリー来航以降の西周達による体系的かつ飛躍的な西洋法学理解へと展開する、日本政治思想史における蘭学の変容の様態がより具体的な形で明らかになるとともに、断続的ながらも両者をっなぐ水脈が浮かび上がってきた。
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