2006 Fiscal Year Annual Research Report
欧州における軍民両用技術輸出管理体制の展開:欧州連合の機能拡大の分析
Project/Area Number |
17730114
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 一人 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 助教授 (60334025)
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Keywords | ヨーロッパ統合 / 輸出管理 / EU / 安全保障 / 軍民両用技術 / 制度ライフサイクル / 規制帝国 / 大量破壊兵器 |
Research Abstract |
今年度の研究としては、まずEUにおける軍民両用技術の輸出管理の実態を分析すべく、積極的な資料収集とインタビューを行った。パリ、ブリュッセルにおける調査では、EUの輸出管理担当官とのインタビューのみならず、欧州の航空宇宙産業による産業界の自主管理組織などを調査し、多国間に渡る規制の統一が進みつつも、各国ごとの政策や対応が異なるだけでなく、企業文化や産業界における規制に対するコンプライアンスのあり方の違いが実際の輸出管理に反映されていることを発見した。また、ロンドンにおける調査では、EUの中でも先進的な輸出管理体制を構築しているDTIを訪問し、イギリスがハイテク技術に対して持っている懸念が、EUのほかの国とは大きく異なることを理解すると共に、企業に対するコントロールを強化している実態を観察した。 今年度の調査を通じて、EUにおける輸出管理のあり方は制度の統一だけでは不十分であり、複雑な問題があることが明白になってきたわけであるが、それと同時に、本研究を進めていく上で、日本の輸出管理のあり方との違いも強く認識するようになってきた。とりわけ、地域を単位とする輸出管理のメカニズムを構築することが、グローバルに展開する軍民両用技術の輸出を管理するのに不可欠であるとの認識を強めた。したがって、本研究を進めると同時に、日本と東南アジア諸国との関係などにも関心を向け、この分野での研究を進めた。 その研究実績が、安全保障貿易管理学会において報告した「東南アジア諸国の輸出管理の問題点」という報告と、シンガポールで行われたGlobal Trade Controlというシンポジウムでの"Outlook of Export Control in South East Asian Countries and the Role of Japan"である。また引き続き行っているEUの研究として日本政治学会の年報と国際安全保障学会の年報に一本ずつ論文を掲載し、慶応大学出版会から出された『EU統合の軌跡とベクトル』にEUの機能拡大の理論的な考察として制度ライフサイクル論を用いた論文を掲載した。
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