2005 Fiscal Year Annual Research Report
経済外交の側面から見た1990年代の中国対外政策の構造と実践に関する研究
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17730124
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Research Institution | Toyama National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
海老原 毅 富山商船高等専門学校, 国際流通学科, 講師 (80342484)
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Keywords | 政治学 / 国際関係論 / 対外政策 / 中国外交 / 経済外交 |
Research Abstract |
本年度は、本研究に関する先行研究の発掘と分析に主に従事し、3点が把握できた。 1.改革開放以降の中国対外政策については先行研究が比較的に豊富であるが、特に英米では対外政策を全般的に捉える研究が多く、対外政策決定過程の構造に焦点を当てた研究成果も提示されている。日本の学界では、一次資料の綿密な読み込みによる国際情勢認識や対外戦略の分析が主流であるという傾向が指摘できる。そこで、双方の長所を共に盛り込んだ研究の実施が必要である。 2.経済外交は、日本の学界において、経済中心主義を掲げた戦後日本外交を分析する概念として提起された。この概念の定義は一元化されておらず、主に2つの解釈が存在する。1つは「経済的目標を達成するための外交」であり、もう1つは「経済的手段を用いてある目的を達成する外交」である。中国の学界では、日本の学界での傾向を踏まえた研究が発表されている。対外政策の実施組織に着目する時、対外経済問題を担当する商務部は前者の思考が強く、対外政治問題を担当する外交部は後者の思考が強いと見ることができる。 3.英米の学界では、経済外交を従来の外交研究に対して多様性をもたらす枠組みとして取り上げた研究がある。例えば、政策に関与するアクターを政府のみから、議会や企業、国際組織等にも広げている点に多様性が表れている。そこでは、政府が政治と経済の間、国際的圧力と国内的圧力の間、政府とそれ以外のアクターの間にある緊張関係を調整しようとする機能が分析対象となることが指摘されている。これらを踏まえると、経済外交の視角は「ツー・レベル・ゲーム」アプローチ等、国際問題の交渉過程に焦点を当てる研究に発展する可能性を持つ。資料が入手可能となれば、経済外交で分析する事例として中国のWTO加盟に関する二国間交渉が適切だといえる。今年度、これを事例として中国対外政策の実施組織に関する研究論文を執筆した。
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