2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730128
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
清水 大昌 学習院大学, 経済学部, 助教授 (10396898)
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Keywords | 経済理論 / 産業組織 |
Research Abstract |
前年度までの研究において、立地-数量競争モデルにおいては、先行研究ではほとんど扱われてこなかった輸送費用の非線形性が政策含意に非常に重要な影響を与えることが分かってきた。本年度ではこれを深く掘り下げることに成功した。まず、Matsumura and Shimizu(掲載予定,Japanese Economic Review)において、現実に見られる最大離散でもなく集積でもない立地パターンが、立地-数量競争モデルの均衡における実現値として起こりえることを示した。企業が円環市場に二社いる場合を考え、それぞれが混合戦略を採るとする。この設定は、企業が立地選択を簡単に変更できずお互いに情報伝達も出来ない場合にはもっともらしいといえる。均衡では、それぞれの企業が複数の均等に離れた立地点を等確率で候補にすることが均衡となることを示した。また、立地点がそれぞれ2つと限定される場合には、企業1が0度と180度、企業2が90度と270度にそれぞれ50%の確率で立地することが唯一の混合戦略均衡(退化したもの、つまり純粋戦略均衡を除く)となることも示した。これにより、企業が例えば0度と90度に均衡経路上では立地する可能性があることを示した。また、この結果は輸送費用が非線形であることが重要である。線形では均等に離れた立地点ではなくても均衡になりえることを示したが、現実のように非線形輸送費用を考えることによって、多数の均衡候補が排除され、均等立地点が均衡選択されることが分かった。 次に、この理論結果がどれだけ現実の事象に当てはまるかを考えるため、実証分析を始めた。まず最も基本的な結果、つまり企業は輸送費用を支払うため、立地から近い市場においてより競争で優位に立てるため、他の要因を一定にすれば供給量が増えるということを、日本の自動車市場において回帰分析を行った。結論としては、仮説は支持され、人口や市場の大きさという当然利いてくる説明変数のほかに、工場からの距離が影響しないという仮説を95%有意水準で棄却することが出来た。
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