2005 Fiscal Year Annual Research Report
組織における継続的なインセンティブ付与に関する理論的研究
Project/Area Number |
17730129
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 助教授 (20314461)
|
Keywords | 長期的関係 / 繰り返しゲーム / 費用観測 / フォーク定理 / 多層的関係的契約 / 多市場接触 |
Research Abstract |
当初計画通り、「組織における情報構造デザイン問題の研究」を中心に研究を行った。主要な成果は以下の通りである。 1.費用観測モデルの繰り返しゲームにおけるフォーク定理の彫琢 費用観測モデルとは、プレーヤーが相手の過去の行動を正しく観測するには費用を払わなければならない状況を記述するモデルである。このモデルでは、通常の繰り返しゲームのモデルと異なり、費用を払って観測を行うインセンティブをプレーヤーに与えるという新たなインセンティブ問題が発生する。研究代表者自身の以前の研究により、このようなクラスの長期的関係のモデルにおいても協調の達成は可能であり、また通常のモデルと同様のフォーク定理的結論が得られることが示されている。今回はこの結論を、より一般的な観測のタイミングに拡張することができた。 2.多層的長期的関係における協調の達成可能性について 複数の長期的関係が組み合わさった構造の長期的関係モデルを構築し、効率的な結果が実現するための条件について考察した。いわゆる多層的関係的契約は、このモデルの範疇に入る。ただ今回はその副産物的なモデルを考え、産業組織論でよく問題になる多市場接触効果に関連して、1人の巨大なハブプレーヤー(コングロマリットあるいは全国区企業)と多数の小さなスポークプレーヤー(地元企業など)が各スポーク市場で競争するモデルを考えた。ハブプレーヤーのみが全ての市場の結果を観測できるという情報構造下で、結託を達成できる利得構造・割引の構造について分析した。通常のコングロマリット対コングロマリット型の多市場接触モデル同様、長期的関係が多層的なことによる結託促進効果が示された。この結論を、当初の問題意識である、組織における多層的な労使関係問題に結びつける作業も行っている。
|