2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730130
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中嶋 智之 京都大学, 経済研究所, 助教授 (50362405)
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Keywords | 金融政策 / 非完備市場 / 価格硬直性 / 失業 |
Research Abstract |
資産市場が完備でない場合における最適な金融政策を研究するために、本年度は価格硬直性のあるマクロモデルに効率賃金を導入し、失業保険が不完全なケースにおける最適な金融政策の分析を行った。失業保険が不完全であるため、失業は非自発的である。伝統的なマクロ経済学での議論においては、非自発的な失業の存在を安定化政策の必要性の根拠の一つとされるが、本研究での目的はそのような伝統的な議論がミクロ的基礎付けをもつ動学的一般均衡分析の枠組みにおいても成立するかどうかを理論的・数量的に確かめることである。まず、非自発的失業の存在は必ずしも景気安定化の必要性を高めるわけではないことがわかった。この点において重要なパラメータはリスクシェアリングの程度が景気循環上でどのように変化するかである。リスクシェアリングの程度を失業者の就業者に対する相対所得で測ると、リスクシェアリングの程度が景気循環上で一定ならば、非自発的失業の存在は最適金融政策の下での生産量の変動を高める場合も低める場合もありうる。前者は外生的なショックが政府支出に対するもの(需要ショック)であるときに生じ、後者は生産性に対するもの(供給ショック)であるときに生じる。ただし、近年の実証分析によれば、上記の意味でのリスクシェアリングの程度は好況時に上昇し、不況時に低下する。この点を考慮に入れ、失業者の相対所得が景気循環上でprocyclicalに変動するという仮定を置いたときには、より積極的な安定化政策が支持されることがわかった。
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