Research Abstract |
2006年度(平成18年度)は次の2つの論文を執筆した. 論文[1]Environmental tax reform, economic growth and unemployment in OLG economy 論文[2]Environmental tax reform in an overlapping-generations economy with involuntary unemployment 論文[1]は,昨年度の研究結果をまとめたものである.失業保険給付の置換率を一定に保つ制約のもとで失業保険負担の削減と環境税の導入をセットにした改革を検討した.分析の結果,以下のことを明らかにした.(1)環境税収が失業保険給付の財源として活用されるため,これが家計に対して正の所得効果をもたらし,その結果,経済成長率は改善する.(2)失業保険負担,環境税負担はともに失業率を増大させるが,置換率を一定に保つような失業保険負担の削減と環境税の導入をおこなったとき,失業率は不変に保たれる.(3)環境税導入によって労働者一人当たりの排出量が削減される一方で,置換率一定の改革のもとで雇用は不変であるため,経済全体の排出量は削減される.(4)改革開始時の老年世代の貯蓄リターンが環境税によって低下するため,この世代の厚生が低下する.将来世代は便益を得るものの,現在の老年世代が損失を被るため,世代間トレードオフが発生する.本論文は,財政学の専門雑誌FinanzArchivに投稿し,採択された. 論文[2]では,次の2点について論文[1]の分析を発展させた.第1に,近年注目を集めている税収中立改革に焦点をあて,(税収)-(失業保険給付)が一定となる税収中立な社会保障減税と環境税導入が環境,失業,各世代の厚生に与える影響について見た.第2に,論文[1]ではワークシェアリングを仮定することで世代内分配の問題を無視していたのに対し,論文[2]では世代内で就業者と失業者が存在する状況を想定し,環境税改革が世代内分配に与える影響についても考慮した.分析の結果,税収中立改革は世代内のパレート改善をもたらすが,世代間については論文田と同様の,厚生に関するトレードオフが存在することが明らかになった.論文[2]は現在,学術雑誌に投稿中である.
|