2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730133
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小原 美紀 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 助教授 (80304046)
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Keywords | 経済事情 / 経済政策 / 経済統計学 / 経済理論 |
Research Abstract |
まず、90年代半ば以降の失業の増加が、家計間格差にどのような影響を与えたかについて分析した。1984-99年の『全国消費実態調査』(総務省統計局)を用いた分析の結果、(1)可処分所得と消費のどちらでみても全体の不平等度は若干拡大した、(2)44歳以下の失業者と非失業者の間の不平等は拡大していないのに対し、45歳以上の失業者と非失業者の間の不平等は拡大した、(3)同時に、45歳以上の失業グループ内には低所得(低消費)者と高所得(高消費)者が混在するようになったことが分かった。これらより失業者の生活を支えるためには失業者全体への一律の所得移転を行うよりも、消費でみた生活困窮者にターゲットを絞るべきであると結論した。 この分析の貢献は、格差を計測するにあたり、所得だけでなく消費支出を対象とし、2人以上世帯だけでなく単身世帯を含め、勤労者世帯だけでなく農林漁業世帯や自営業世帯を含めるなど、先行研究とは異なり包括的な世帯を対象としたことにある。分析結果は、「失業の増加と不平等の拡大」として、『日本経済研究』55号(2006年10月)に掲載された。 また、昨年度に引き続き、夫が失業したときに妻がどのような行動をとるかについて分析を行った。『消費生活に関するパネル調査』(家計経済研究所)を用いた分析の結果、90年代後半、夫が失業した家計では妻が働きに出る行動をとったことが示された。また、妻は実際には雇用してもらえなかったとしても、働きたいというインセンティブを高めることが分かった。失業による家計厚生の低下は、妻の労働により下支えされた可能性が指摘される。論文は"The Reaction of Japanese Wives‘ Labor Supply to Husbands'Job Loss"としてまとめられ、査読雑誌から受けた1回目の改訂要求について改訂を施し、再投稿中である。
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