2005 Fiscal Year Annual Research Report
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17730139
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
土居 潤子 京都産業大学, 経済学部, 講師 (00367947)
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Keywords | 経済成長 / 消費習慣 / R&D |
Research Abstract |
本研究の目的は、消費者の効用を決定する要因は何か、消費の習慣形成はどのようになされるのか、ということを明らかにした上で、それらを取り入れた成長理論を構築することである。消費者は、自らの消費水準からのみ効用を得ているのではなく、デューゼンベリーが指摘したように社会の標準的な消費行動や自らの過去の消費行動にも影響を受けることが知られている。こうした要因が、企業の行動、さらには、経済成長にどのような影響を与えるのだろうか。また、経済成長に対する政府の政策の効果はどうだろうか。 研究の第一段階として、消費の習慣が、財ごとに形成されるという点に注目し、Grossman and Helpman(1991)モデルに、他人の消費が自らの効用に影響を与えるという消費習慣を導入したモデルを構築した。このモデルは、効用や消費量は、他人への嫉妬心を抱く場合には減少し、反対に、他人への憧れの感情を抱く場合には増加するという性質を持つ。これは、前者の場合には将来、消費習慣が蓄積されるにつれ、消費量が減少することを意味している。企業はこうした予見を織り込み、先に利潤を確保しようとするであろう。このため、本モデルの企業は、通常のモデルより高い価格を設定する。高価格は、消費者の需要をより一層減少させるため、企業は財の生産を減少させ、新しい財の開発へと労働を移動させることとなる。したがって、現在の経済成長率は高くなる。後者の場合には逆のメカニズムが働き成長率は低くなる。政府の政策としてR&D企業に対する賃金への補助金を考えた場合、最初の賃金水準によって、その補助が結果的に成長率を低める場合があることを明らかにした。
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