2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 教孝 北海道大学, 大学院経済学研究科, 助教授 (80334598)
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Keywords | 経済理論 / 金融論 / 財政学 / 情報の経済学 |
Research Abstract |
今年度の研究は主に2つの方向に進んだ: ひとつは、昨年度同様、日本のデフレーションという現象を解明するための理論的な枠組み作りである。昨年度得られた知見であるところの「単年度の財政赤字はインフレ圧力になるが、累積赤字、特に国債累積残高の増大はデフレ圧力になりうる」というメカニズムをさらに掘り下げるべく研究を進めた。今年度新たに解明された点は、中央銀行が国債を直接引き受けない状況であっても、政府が国債発行を加速させることで名目利子率の増加圧力を生じさせ、日銀のように低金利にコミットしている中央銀行はそれを抑制するために市場に貨幣を供給せざるを得なくなることである。面白いことに、その結果、国債と貨幣の両方に対する需要が拡大し、それが貨幣価値増大(デフレ)をもたらすことが判明した。さらに、過度な国債発行が民間投資を抑制(クラウディング・アウト)する結果、産出水準も低迷してしまう。このような非合理的な政策運営を永続的に行うことはできないため、ある時点で政策を転換する必要が出るが、それが遅れるほど、改革後の経済成長をも阻害してしまうことが判明した。 もう一つは、売り手と買い手が異なる情報を持っている市場における政策の効果に関するものである。今年度の研究成果として解明した点は、情報の非対称性のある市場に政府が介入した場合、それが情報を偽るインセンティブを持つ経済主体の行動に影響を与えるという新しい効果が発生するため、経済政策の効果が、情報が完全な市場におけるそれと異なってしまう、というものである。この研究成果はレフェリー付きの国際学術誌に掲載が決定している。(ただし掲載は19年度の見込み)
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