Research Abstract |
本研究は,民間の経済活動が,規模の経済性や外部効果等のために,特定の地域に集積していくような状況下において,公共サービスの運営と供給およびそれに必要な社会資本の整備に携わっている公的部門あり方について,中央政府と地方政府の関係,政府部門と公営企業との関係-課税や補助・規制等を通じた関係-に留意しながら,解明していくことを目的としている. 地方政府が採用する公共政策の質が,その地域の企業や住民の質に依存して決まってくる時,採用される公共政策の地域間の差異,およびそこに立地する企業や住民の差異が,どのような動向を辿るのかについて検討した.ある条件下では,規模の経済性を前提としない場合でも,集積が発生すること-限定された地域だけが,質の高い民間経済主体を引き付け,質の高い公共政策を採用するようになる-ことを明らかにした.こうした理論的な分析の成果は,論文"Migration in search of good government"にまとめられている. その地域内における社会資本・公共サービスの供給が,地方政府に委ねられている場合,都市部においては多くの社会資本が供給される一方で,地方部においては少ない社会資本しか供給されず,都市と地方の産業構造や人口等は固定化されてしまう.しかしながら,これらの地域の結びつきが強まっていくにつれ,小さい確率ではあるが,地方が非常に大きな社会資本を供給し,産業構造や人口等が変動する可能性があることを明らかにした.こうした社会資本の供給量が,社会的に望ましい水準からどの方向に乖離するかを解析的に明らかにする一方で,都市・地域の逆転現象がどのくらいの確率で生じ得るのかを,シミュレーションを援用しながら考察した.こうした理論的な分析の成果は,論文"Providing public infrastructure competition and new economic geography"としてまとめ,現在投稿中である.
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