2005 Fiscal Year Annual Research Report
価格競争効果と所得効果を含む独占的競争の一般均衡理論とその応用
Project/Area Number |
17730165
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
村田 安寧 日本大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (40336508)
|
Keywords | 独占的競争の一般均衡理論 / 価格競争効果 / 所得効果 / 極限定理 / 絶対的危険回避度一定 / 空間経済学 / 経済発展 / 経済成長 |
Research Abstract |
独占的競争の一般均衡理論は,空間経済学や経済発展・経済成長論など多くの分野で利用されてきた.現時点における標準的な理論的枠組みは,CES効用関数に基づくDixit-Stiglitz型か,2次の準線形効用関数に基づくOttaviano-Tabuchi-Thisse型である.前者は所得効果がある一方で,マークアップ率が一定という限界があり,後者は各企業の利潤最大化価格が総企業数の減少関数である(以下,価格競争効果がある)ものの,所得効果が無いと批判されてきた.こうした現状を踏まえ,本年度は,価格競争効果と所得効果を含む(閉鎖経済,かつ,静学の)独占的競争の理論を構築し,企業数が無限大に近づくとき,価格が限界費用に収束すること(以下,極限定理)を一般均衡の枠組みで示した.以上の結果は,これまで部分均衡の枠組みで分析されてきた産業組織論的な性質(価格競争効果,極限定理)を持っているので,従来の部分均衡分析を一般均衡分析に埋め込むのに用いられることが期待される. また,所得効果のある独占的競争の一般均衡理論の枠組みで,加法分離的な効用最大化問題の一階条件に着目し,どのような性質の下位効用(sub-utility)関数が価格競争効果と極限定理を生成するのかを分析した.そこで明らかになったのは,限界下位効用関数の逆関数が加法準分離という条件である.さらに,この条件は,下位効用関数が絶対的危険回避度一定という条件と同値であることを示した.対照的に,限界下位効用関数の逆関数が乗法準分離であることと下位効用関数が相対的危険回避度一定(あるいはCES型)であることが同値であり,そのときマークアップ率が一定になることを明らかにした.以上の結果は,独占的競争の一般均衡分析に相応しい効用関数型の候補を絞り込むのに有益であろう.
|