2006 Fiscal Year Annual Research Report
飲食料品に関する原産地表示および地理的表示制度の経済効果
Project/Area Number |
17730168
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
中澤 栄一 明海大学, 経済学部, 助教授 (80276401)
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Keywords | 地理的条件 / 原産地呼称 / 原産地規則 / 国際貿易体制 / 知的所有権 / 集合的評判 / 差別化 / ヘドニック |
Research Abstract |
我が国の飲食料に関しても、世界貿易機関(WTO)におけるTRIPS協定やドーハ開発ラウンドにおける地理的表示(GIs)に関する議論の行方が重要になってきており、平成18年度はGIsの経済学的効果に関する理論的・実証的分析に対象を絞った。欧州連合(EU)とアメリカ合衆国の間では、20年もの対立を経て2005年にワイン協定(EU-US wine accord)が締結されたものの、GIsの保護や他の商品への拡大を巡る対立が依然として続いている。先ずこの問題の歴史的経緯を調べ、数少ない先行研究における理論的な分析を批判的にサーベイした。GIsが厚生に及ぼす経済効果としては、商品の品質に関して消費者がもつ情報の非対称性を解消する正の効果と、新規参入や生産者の品質向上を妨げる負の効果のいずれかが大きいかが、特に重要である。理論的には、Tirole(1996)による集合的評判(collective reputation)の理論を応用することにより、GIsが差別化された商品の品質や価格に及ぼす効果を分析することができるが、モデルの設定によって結論は異なってしまう。そこで、品質が価格に及ぼす効果を実証的に分析する方法として、ヘドニック法(Hedonic regression approach)を用いた実証分析を飲食料の価格決定に応用した文献を収集した。例えば、中でも分析例が多いワインの価格決定においては、地域や時期による相違はあるものの、現在の品質よりも過去の評判が価格に及ぼす正の効果の方が大きい一方で、原産地呼称(appellation)が価格に及ぼす影響は最近では必ずしも大きくない。他方、GIsが生産者の参入や市場構造に及ぼす効果に関する実証研究は殆ど蓄積されていない。そこで、次年度は、(1)GIsが市場構造に及ぼす効果の実証分析、(2)国際ルールにおける知的所有権の保護の重要性が近年高まっている日本の商品(特に日本酒と和牛)に関する実証分析と政策提言、の2点に焦点を絞って研究を完結させる予定である。
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