2005 Fiscal Year Annual Research Report
電力取引市場におけるスポット・デリバティブ価格形成モデルとその経済政策への適用
Project/Area Number |
17730170
|
Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
石井 昌宏 大東文化大学, 経営学部, 講師 (90323881)
|
Keywords | 電力取引市場 / 電力スポット価格 / 価格のスパイク / 複占市場 / Nash均衡 / 市場支配力 |
Research Abstract |
2005年度における研究の中心テーマは,「寡占市場における市場支配力(クールノー的な生産量の調整)の下で,電力スポットおよび電力フォワード価格を導出する議論の枠組みの作成.」であった.2005度にはこの研究テーマの中で以下の成果があった. 1.電力スポット価格導出のあるモデルを作成した.具体的には,複占市場において,電力需要量が不確実な場合に,各発電企業がその供給曲線の提示を戦略的に行うモデルである.ただし,各発電企業のストラテジーをある範囲内に制限している.このモデルの特徴は,電力需要量の分布に無関係にこの議論を適用できること,Nash均衡が一意に存在すること,などである。 2.このモデルを用いて,複占市場における電力スポット価格の確率分布と競争市場における電力スポット価格の確率分布を比較した.これは市場支配力を計量する一つの手段である.さらに,このモデルを基礎とした考察により,電力スポット価格に散見されるスパイクの一要因が明確になった. 3.2社の発電能力間に差があるモデルを用いることで,その発電能力差および電力需要の確率分布が電力スポット価格の確率分布へ影響するしくみが明確になり,かつ,その影響を計量的に捉えることが可能になった. なお,この研究成果の一部を2006年6月に開催される公益事業学会で報告する予定である. 現在,研究の中心は「上記モデルにおける各発電企業のストラテジーの範囲の拡張」および「複占市場から寡占市場への拡張」である.そして,これと同時にこれまでの研究成果をまとめて投稿論文を作成する作業を行っていく. 最後に,この研究の副次的効果を記しておく.電力取引市場を分析するためのモデルをほぼそのままの形でタンカーの用船料決定メカニズムの分析にも適用できる.そのため,この分析作業も同時に行っている.
|