2005 Fiscal Year Annual Research Report
企業の研究開発分野選択に関する実証分析:新薬開発をめぐる競争
Project/Area Number |
17730171
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
中村 豪 東京経済大学, 経済学部, 専任講師 (60323812)
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Keywords | 研究開発競争 / 研究開発分野の選択 / 製薬業 / 技術進歩 / 経済成長 |
Research Abstract |
市場に大きなインパクトを与えたと考えられる新薬を選び、その新薬が属する薬効分類における新薬開発のデータを収集した。このデータには、開発に成功したもの以外にも、および開発中止・中断となったものを含む。データセットには、(1)薬名、(2)開発企業名、(3)起源となる物質を開発した企業名、(4)主な適応、(5)新規物質か否か、(6)前臨床から薬価収載・開発中止までの各ステージ到達時期の情報が含まれている。「市場に大きなインパクトを与えた新薬」の定義は、医薬品開発に関する雑誌「ミクス」のアンケートにおいて、上市初年度に採用された病院数でみて上位10ブランドのものとした。これにより、37の薬効分野における3144の新薬のデータを集めることとなった。 この中で、特に消化性潰瘍剤に注目して、研究開発の成功率を調べた。消化性潰瘍剤の分野は、世界的に高いシェアを得ている新薬を輩出した分野である。この画期的新薬が最終的な臨床試験を行ってから承認を受ける間に開発中であった新薬は、その前後に開発されたものと比べて、開発を中止・中断する確率が低いことが示された。これは、画期的新薬が開発される時期には、研究開発に対する評価が、他の時期よりも厳しくなっていることを示唆しており、このことから、競争環境が厳しいときには研究開発のインセンティブが低下すると予想される。 また、データの収集と並行して、医薬品開発に関する諸制度の変遷についても整理している。中でも1990年のGCP施行は、海外での臨床データを日本での審査にも使えることとなり、海外からの市場参入を促す重要な出来事である。既存研究では、海外製品の輸入が国内企業の研究開発に及ぼす影響を分析したものがあり、このような海外からの参入を促すような制度変更が、日本企業の新薬開発に及ぼす影響も重要な論点となりうることが考えられる。
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