Research Abstract |
第1に,事例研究という方法を正当化するために,方法論的基礎付けを行った。本研究で採用される枠組みは,多くの技術革新研究がそうであるように,基本的にEvolutionary Economicsに依拠しているが,この枠組みを採用する限り,因果連関を詳細に追跡可能な事例研究が正当な研究手段であるということを論証した。第2に,本研究の主題でもある比較制度論的なイノベーションシステム理解を再検討するため,半導体産業における特許取得状況を分析した。その結果,米国と日本のイノベーションシステムの差異を過度に強調することは適当ではないという理解に達した。以上の2つの研究によって,本研究を位置づける基礎を構築できたものと考えている。 第3に,旧電電公社の電気通信研究所に関する聞き取り調査を開始した。とりわけ本年度は,電電公社におけるエレクトロニクス研究の流れを大まかにつかみ,重要な勘所を掴むことに重点を置いた。とりわけ,電子管から化合物半導体に至る,戦前から戦後にかけて半導体研究が一貫して追及されていたことについて,重点的に聞き取りを行った。また同時に,電電公社と民間企業の関係,とりわけ資材調達の仕組みについて理解することにも重点を置いた聞き取りを行った。 第4に,当時の電気通信研究所に関する資料収集を行った。これらのうちには,中心人物の追悼論集など極めて貴重な資料が含まれており,次年度以降の研究に資するものである。また,関連新聞記事の収集も行った。 以上のような研究から,本年度は,次年度以降の本格的な展開の準備が十分に出来たものと考える。
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