2005 Fiscal Year Annual Research Report
レント・シーキング社会における社会的損失に対する進化ゲーム論的アプローチ
Project/Area Number |
17730177
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
佐野 博之 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (60301016)
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Keywords | コンテスト / 過大消失 / 模倣行動 / 確率的に安定な状態 |
Research Abstract |
今年度は、タロック(Tullock)・コンテストにおいて、参加者が主に模倣的行動をとると想定したときの長期的な帰結について研究した。 タロック・コンテストの研究において、とりわけ注目を集めてきたトピックスは、レント消失率(レントの価値に占める社会的レント・シーキング支出の割合)である。最近になって、Hehenkamp, Leininger and Passajennikov(2004)は、タロック・コンテストにおける進化的に安定な戦略(ESS)が存在する条件を示し、1<r<N/(N-1)のとき、ESSにおいて過大消失が起きることを示した^*。しかしながら、彼らが用いたESSという概念は参加者の行動原理を明示していないという欠点がある。 ESSを経済モデルに当てはめるとき、分析者は通常参加者の模倣行動を暗に想定している。私はこの研究で、参加者の模倣行動を明示的に採り入れたモデルを組み、確率的に安定な状態(SSS)が唯一存在することを示した。このSSSにおいては、有限のr>1ならば消失率はrに等しくなるので、長期的に見て過大消失が優勢となる。この結果は、Hehenkamp et al.(2004)よりも弱い条件で生じ、より過大なレント消失を招く可能性があることも意味している。しかしながら、参加者の模倣行動に現実性のある仮定を加えて修正することにより、r>1のときはつねにレント消失率は1になるという結果が得られた。すなわち、現実的に見て妥当な行動原理を明示的に採り入れたモデルにおいては、長期的に過大消失が優勢になることはない。この論文は、European Journal of Political Economyに投稿中である^<**>。 ^* Hehenkamp, H., Leininger, W., and Passajennikov, A.(2004) "Evolutionary equilibrium in Tullock contest : Spite and overdissipation", European Journal of Political Economy, Vol.20,pp.1045-1057. ^<**> Sano, H.(2006) "Imitative learning in Tullock contests : Does over dissipation prevail in the long-run?", mimeo.
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