2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国民営企業における企業金融の実証分析-企業間信用と銀行融資-
Project/Area Number |
17730185
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
矢野 剛 徳島大学, 総合科学部, 助教授 (90314830)
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Keywords | 企業間信用 / 中国民営企業 / 短期資金 / 長期資金 / 情報生産・流通 / 人的ネットワーク |
Research Abstract |
平成16年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。 今年度は、中国における企業間信用の実態とその機能の解明を中心に研究がおこなわれた。3度の現地調査をおこない、また企業マイクロデータおよび集計マクロデータによる計量経済学的分析もおこなった。 第一の研究成果は、1990年代初頭に中国における企業間信用の性質が変化しつつあったことが中国企業マイクロデータを用いた計量分析によって明らかにされたことである。我々の分析は、経済改革初期には「借り手による貸し手の収奪」の色彩が強かった中国における企業間信用が,1990年代初頭に次第に貸し手側が経営上の合理的な手段として使用する「互恵的な信用の授受」へと変化していく統計的証拠を見出した。そして現在の中国における企業間信用は、西側諸国のそれと同様、正常な現物による融資として企業金融仲介手段中に重要な地位を占めている。この成果はワーキングペーパーとして既にまとめられ現在投稿準備中である。 研究成果の二つ目は、現地調査より中国民営企業における企業間信用を巡る新しい知見が様々に得られたことである。即ち、(1)ロールオーバーが比較的容易な企業間信用は、短期資金のみならず(間接的に)長期資金の供給源ともなっている。(2)特に、通常の企業間信用とは逆の流れを持つ財の買い手による「前払い金」が売り手にとってそのような意味を持つ傾向にある。(3)信用授受の際には各企業は金融機関と同様の信用調査をおこなっており、中国製造業企業が同時に金融機関としての機能をも発達させている。(4)借り手側企業に関する情報生産・流通には、計画経済時代に形成された人的ネットワークが大きく貢献している、等である。これらの成果報告は現在ワーキングペーパーとして執筆中である。
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