2005 Fiscal Year Annual Research Report
団塊世代の退職行動が地域経済に与える影響と地域再生の戦略
Project/Area Number |
17730190
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
川崎 一泰 東海大学, 政治経済学部, 助教授 (40338752)
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Keywords | 団塊世代の退職 / 地域経済 / 公共投資 / 収束 / 2010年問題 / 人口移動 / 地域間格差 / 地域生産関数 |
Research Abstract |
団塊世代の退職及び少子化により就業人口が減少していく中で、東京を中心とした大都会で大量の余剰空間が生じることが懸念されている(いわゆる「2010年問題」)。本研究は、こうした大都市を中心とした土地需給の変化が地域経済にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。特に、都市部の土地需給変化によって、人口移動を伴うものとなるかは、政策的に重要な点であるため、この点に関して重点的な分析を行った。 今年度は、地域生産関数を推計し、そこから導出される各生産要素の限界生産性を利用した分析をいくつか試みた結果、以下のような結果が得られた。 第一に各生産要素の限界生産性の分散等の統計分析、簡単な回帰モデルの推計を通じて、戦後のわが国経済で、生産要素が限界原理に基づいて移動してきたかどうかを検証した。この結果、民間資本については、限界原理に基づく移動が観測されたのに対して、労働力については、限界原理が働いていない時期が存在することが明らかとなった。 第二に、労働力に関して、すべての地域で限界生産性が均等化する人口配置を求めるシミュレーションを実施し、その配置を最適水準とし、実際の人口配置とのギャップを計測した。この分析の結果、東京を中心とする関東圏で、最適配置と現実の配置に大きなギャップが生じており、他地域から労働力を吸収する余力が大きいことが明らかとなった。 第三に、こうしたギャップがなぜ生じるかについて、実証分析を行った結果、公共投資が労働力の移動を阻害している可能性が高いことが明らかとなった。公共投資が地方に重点的に配分された時期に移動が起こらなくなる傾向が観測され、短期的には、需要を創出し、失業を抑制する効果はあったと評価できる。しかし、長期的には、移動を抑制したことにより、低生産性分野に労働力を滞留させ、マクロ的な経済回復を遅らせ、地域経済の活力を失うこととなっていった点を指摘した。
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