2005 Fiscal Year Annual Research Report
カルテル防止に有効な制度設計を目指して-リニエンシー制度に関する理論・実験研究-
Project/Area Number |
17730192
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
濱口 泰代 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 講師 (70399038)
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Keywords | リニエンシー制度 / 独占禁止法 / 囚人のジレンマ / 繰り返しゲーム / 実験経済学 |
Research Abstract |
今年度の研究では、"An Experimental Study of Leniency Programs"(経済産業研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ05-E-003,2005年2月(川越敏司との共著))の改訂のための実験を行った。この論文では、既存のカルテルがリニエンシー制度導入によってどの程度自発的に解体されるかを実験で検証したが、今年度行った実験では、カルテルがまだ形成されていない状況において、リニエンシー制度が導入された場合、新規にカルテルが形成されるのを抑止する効果があるかどうかを検証した。 実験では、カルテルが発覚した場合にペナルティが課される場合と、カルテルが発覚した場合にペナルティが課されるが、リニエンシー制度を申請することによって、ペナルティが減額される場合を比較した。また、グループサイズの影響を観察するために、カルテルグループが2人で構成される場合と、7人で構成される場合とを比較した。実験の背景にある理論モデルでは、カルテルが発覚する確率が十分低く、またゲームの継続確率が十分高く、そしてペナルティが十分低く設定されていたので、カルテルを維持することが、均衡の1つとなっていた(意図的にカルテルが形成されやすい状況を作って、リニエンシー制度の効果を観察した)。 実験結果は、リニエンシー制度が導入されていない状況では、2人グループの場合も、7人グループの場合もカルテルは強固に維持された。しかし、リニエンシー制度が導入されると、2人グループの場合は、カルテル維持に成功するグループとカルテル維持が困難なグループの両方が観察され、7人グループの場合は、カルテルはすべて自発的に解体された。この研究については、来年度にさらに追加実験を行い、リニエンシー制度の効果について詳しく検証する予定である。
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