2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730193
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
寺井 晃 京都産業大学, 経済学部, 講師 (20387989)
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Keywords | 労働組合 / 賃金の硬直性 / 技術進歩 / 経済成長 |
Research Abstract |
平成18年度は,主に労働市場の特性と技術進歩に関する理論研究を行ってきた.とりわけ,労働組合という賃金均等化をもたらす組織が産業に存在する場合としない場合や混在する場合,発生した技術進歩がどのようなマクロ全体の生産性向上への結果をもたらすかを問題とした.取り扱う技術進歩も,マクロ全体で生産性が一様に向上するタイプではなく,より広範に見られるであろう,一部の労働者・一部の生産者が新技術を適用するようなケースを問題とした(このような技術進歩は,Process Innovationとしてよく見られる). その成果として,「労働組合・技術構造の変化と労働力のリアロケーション」を,2006年日本経済学会秋季大会において発表をした.この論文では,労働者と企業がそれぞれ2タイプに分かれており,特定の組み合わせに技術進歩が発生した際のモデル分析である.それにより,労働者が企業を辞めて転職活動を行うかを分析した.労働組合は同一タイプ内の企業では,労働者はタイプによらずに同一の賃金を得る組織として扱われる.結果として.標準的な経済学上の予測とは異なり,社内の労働者の賃金を均等化する労働組合の存在は,マクロ全体の生産性の向上を妨げるとは限らないことが示された.伝統的産業での労働組合の存在は,労働者の退出を促すことを通じて,生産性を向上させるのである.一方で,マクロ全体の生産性向上と比例して,組合員数は減少していく.つまり,生産性の向上には労働組合が必要だが,次第に組合員が減少してゆくということである.こうした本モデル上の予測は,英米や日本でのdeunionizationの過程とも整合的であることが指摘できる. 現在,学会などで受けた指摘などを元に改定作業を行っており,早い時期に投稿することを予定している.
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