2006 Fiscal Year Annual Research Report
地域空間における金融機能の充足-米銀の再編と貸出構成の変化を踏まえて
Project/Area Number |
17730199
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
内田 聡 茨城大学, 人文学部, 助教授 (60329571)
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Keywords | 米国 / 金融再編 / 金融システム / 中小企業金融 / Sコーポレーション銀行 |
Research Abstract |
本年度は特に、米国で97年に容認され急増している、Sコーポレーション(株主数や株式の種類が制限されるものの連邦法人税が課せられない株式会社)銀行(「Sコーポ銀行」)に焦点を当てた。年度前半ではデータベースなどから、Sコーポ銀行の展開を市などの地域単位で把握した。後半はこれに基づき現地調査と資料の整理を行いながら、以下のような成果報告を実施した。 同国では94年の地理的規制の緩和から、メガバンクが多くのコミュニティバンク(CB)を買収したが、メガの戦略や組織規模・形態では満たしにくいニーズを、既存や新設のCBが取り込んでいる。立法面でも銀行集約と異なる動きは幾つかあるが、Sコーポについて言えば、58年に一般の中小企業向けに制定された仕組みが、97年に銀行へも適用可能となり急速に広がっている。Sコーポは二重課税回避の目的で制定されたものだが、これを超えた影響を金融システムに与えている。データ・業界資料・現地調査などの多面的な接近から、以下の暫定的な結論をえた。(1)金融再編でCBは集約される一方、法人所得税免除という新たな組織形態を得た。(2)存在意義については見解が分かれるものの、Sコーポ銀行は既に定着している。(3)当初は田舎の農業銀行からのSコーポ化が多かったが、近年は都市の商業銀行のそれが増大している。(4)Sコーポのパススルー課税は、銀行の新設を促す側面もあり、その範囲は人口増大地域に限らない。(5)Sコーポ銀行の仕組みは、人口減少(郡や市単位では多くの地域が該当)や金融ニーズの多様化に対応する手段の1つと考えられるだろう。わが国でも再編が進んだが、地域金融機関の集約が問題だろうか。米国の集約と分散に学ぶものはないか。
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