2006 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業金融における銀行の役割と金融監督政策のあり方について
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17730209
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
安田 行宏 東京経済大学, 経営学部, 助教授 (10349524)
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Keywords | 金融仲介機関 / 信用保証制度 / 保証つき貸出 / 保証なし貸出 / 担保 / デットオーバーハング |
Research Abstract |
今年度は、信用保証制度を中心に分析を行った。1990年代後半から2002年までの銀行別の信用保証残高のデータを用いて検証を行い、実証結果についてはほぼ出揃った状況である。この分析では、信用保証制度が銀行貸出の増加にそもそも効果があったのか否かという視点から分析を行っている。現在得られている実証結果の特徴は、銀行貸出に対して想定したよりも大きな影響を与える(1単位の信用保証の増加に対して2から6単位の貸出の増加)という点である。この実証結果をどのように解釈するかという問題に現在は取り組んでいる。 この問題とあわせて、保証つき貸出、あるいは担保付貸出が他の通常の貸出にどのような影響を与えるのかという問題を理論的に解明すべく様々な論文のサーベイを行った。この内容の先行研究は思いのほか少ないことが判明したので、現在は間接的に関連する文献に対してもサーベイを行っている。 これらの先行研究のサーベイから、銀行の直面する制約、例えば自己資本比率規制などに加えて、借り入れ企業側の直面する問題、例えば過少投資問題とあわせて議論を組み立てると、上記の現象などを既存理論とある程度整合的に説明できることが判明した。現在のところ、いわゆる過剰債務問題といわれるデットオーバーハングに直面する企業に対して、銀行が通常の貸出を行うインセンティブがない状況に陥り、いわゆる過少投資問題が発生しているときに、保証つき貸出を利用できると、この問題が解消する可能性について簡単なモデルを用いて確認した状況である。今後はこの簡単なモデルを一般化する可能性について探求する予定である。 なお、前年度から継続中の銀行貸出と生保貸出との関係の実証分析は、いつくかのコメントを受けて修正中である。
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