2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730210
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
下川 哲矢 東京理科大学, 経営学部, 講師 (30366447)
|
Keywords | 金融論 / 経済政策 / 経済理論 |
Research Abstract |
近年、金融の高度化に伴い、金融資産の保有形態が多様化し、その取引額も飛躍的に増大している。経済活動に内在する様々なリスクに対応するために、数多くの金融商品が開発され、数年前とは比較にならないほど、多様な商品が、しかも迅速に、取引されている。このような状況において、高度化した金融取引を政策的にどのように制御すべきかという問題を分析する意義は小さくない。私はこれまで、リスクと最適課税(あるいは補助金)の関係について研究してきた。具体的には、確率微分方程式を用いて最適課税問題を定式化することで、リスクを明示的に含む最適資産収益課税公式(以下、便宜上「基本公式」と言う)を導出した。この公式は、リスクの異なる2つの資産の最適課税率の関係を明らかにするとともに、金融派生商品取引など、より複雑なリスク構造をもつ資産収益への課税分析を可能にするものである。本年度は上記の基本公式を、デリバティブ資産への課税問題と、民間がプロスペクト理論に代表される限定合理性を持つ場合へ応用し、拡張した。デリバティブ資産への課税問題では、リスクが非常に大きくなる場合、それに伴って最適課税額も増大することが示された。また、プロスペクト理論との関係では、金融均衡理論で有名なEquity Premium Puzzleと最適課税理論との関係が明らかにされた。具体的には、もし過度のEquity Premiumが存在するのならば、その経済での最適資産収益課税は0よりもはるかに大きくなりうることが示された。この研究の過程で得られた知見のいくつかはワーキングペーパーや雑誌論文という形で公表された。
|