Research Abstract |
平成18年度におきましては,平成17年度に引き続き,米国での理論と定型的事実を踏まえつつ,経済主体の行動様式や市場参加者の心理状態等が,我が国の金融市場において,どのように表出するのかを解明すべく,我が国のデータを用いて,研究課題であります行動ファイナンスに関する実証分析を丹念に行って参りました。 主な成果といたしましては,まず,日本のオプション市場における投資家の反応を実証分析により調査・吟味いたしましたところ,Stein(1989)等による米国での先行研究と同様に,概して投資家の情報に対する過剰反応が,日本の市場でも検出されるとの結果が得られました。本実証結果は,わが国で初めて提示されるものでありましたため,Tsuji(2006,AFL)にて論文として発表いたしました。 また,日本の投資家による予想データを分析し,統計的に検証いたしましたところ,短期においては,米国での先行研究であるSolt/Statman(1988)などとは異なり,投資家の予測が必ずしも単純な外挿によるものではないこと,また複合的に予想情報を用いれば,株式市場の方向性の予測にとって,ある程度有用となりうるといった興味深い結果が得られましたため,これにつきましても,Tsuji(2006,AFL)にて論文として発表いたしました。 その他にも論文発表を行い,平成18年度には論文として計6本の研究成果をあげることができました。また,関連研究にも順次着手いたしており,研究期間の最終年度であります次年度も,より興味深い成果を出すことができますよう,また最終年度としての効果的なとりまとめが行えますよう,より一層精進して参りたく考えております。
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