2005 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期内国金融再編成に対する対外金融のインパクトの再検討
Project/Area Number |
17730217
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
白鳥 圭志 東北学院大学, 経済学部, 助教授 (70337187)
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Keywords | 金本位制復帰問題 / 横浜正金銀行 / 普通銀行制度改善政策 / 台湾銀行 / 朝鮮銀行 / 管理通貨制 / 対外的信用と植民地統治 / 「セイフティ・ネット」の変容 |
Research Abstract |
本年度の中心的作業は、金本位制復帰問題が、日本の内国金融制度の再編成に与えた影響について、主として政策面を中心に分析を進めた。その結果、これまで、対外金融と国内金融の問題を切り離して考えていた先行研究とは異なり、両者には密接な関係があったこと、具体的には1920年代から30年代初頭にかけての内国金融制度の再編成は、国内の各地域金融経済への配慮に強いけん制を受けつつも、金本位制復帰問題に強い影響を受けて実施されたことが明らかになった。その上で、管理通貨制移行後の現代的経済政策とされる金融規制などの諸政策は、日本の場合、他の先進諸国とは異なり、金本位制復帰問題の影響を強く受けて形成されたこと、管理通貨制以前に日本の金融の主要な「セイフティ・ネット」であった、日銀特融と銀行経営者である大資産家の個人資産による預金払出という制度も根本的に変化を蒙ること、その結果、管理通貨制移行以降、日本の金融、「セイフティ・ネット」は日銀特融の一元化していくことが明らかになった。さらには、日銀特融、銀行合同政策、金融規制(含銀行検査)の相互の戦略的補完関係の特質として、1925年以降、その相互関係の形成が明確化したこと、金本位制復帰問題と各地域金融経済への配慮の狭間で、一貫した政策が採れなかったことが明らかになった。さらには、対外信用維持・植民地統治との関わりで、内国金融再編政策も、朝鮮銀行、台湾銀行の整理問題に影響を受けたことも明らかになった。これらの諸成果は、現在、日本学術振興会に出版助成を申請している拙著『両対戦間期における銀行合同政策の展開』(八朔社)に盛り込まれており、出版助成を得ることが出来た場合、2006年9月に刊行される予定である。 さらに本年度は、台湾銀行・朝鮮銀行・横浜正金銀行についての研究史のサーベイを再度やり直した上で、1920年代から30年代にかけての同行のほか台湾銀行や朝鮮銀行の経営に関する資料の収集を行った。これらの銀行については、来年度以降、台湾銀行と朝鮮銀行については、1925年以降の経営再建問題および破たん処理問題と金本位制復帰政策の関係に焦点を絞って分析し、その特質を明確化する予定である。また、横浜正金銀行については、特に金本位制復帰問題と内国金融の再編成に関わる問題に重点を置く形で、その経営戦略、政府・日銀との関係、国内の産業金融・為替資金供給といった点に着目して、本格的な分析に取り組む予定である。また、これらとの関係で、日本銀行金融研究所が所蔵している関連史料の調査と収集にも本格的に取り組みたいと考えている。
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Research Products
(1 results)