2006 Fiscal Year Annual Research Report
産業の脱成熟化と競争力-技術転換戦略の国際比較研究-
Project/Area Number |
17730223
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
福島 英史 法政大学, 経営学部, 助教授 (20313439)
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Keywords | 産業発展 / 技術転換戦略 |
Research Abstract |
本年度は,平成17年度に行われた予備的調査の知見をもとに,まず産業の成熟化・脱成熟化のメカニズムと企業戦略との関わりについて既存研究・理論の整理を行い,本研究の位置づけの明確化と分析枠組みの精緻化を行った.分析枠組みを構成する変数として,特に以下に注目することになった.すなわち,1.長期と短期の合理性,2.技術・商品開発主体の構成(組織内・組織間)と関係,および3.彼らの経営資源と相互依存性,4.基礎研究・実用化・用途開発の関係,5.組織内の資源獲得論理(実用化前と後),6.国家/社会による支援である. 次に,調査対象企業を絞り込み,産業の脱成熟化と競争力について少数だが深みのある事例研究を試みた.具体的には,技術開発状況並びに事業成果について調査を進めた上で,技術開発に関与する技術者たち,および組織内部で意志決定権限を持つマネジャーたちを対象として詳細な聞き取り調査を行った.顕著な特徴とアクセス可能性から調査対象として選ばれたのは,日本の電力企業,部材メーカー,総合エレクトロニクスメーカー3社と,海外の重電企業1社であった.本事例研究は,次年度も継続されるが,現時点で産業レベルの脱成熟化および企業レベルの技術転換行動について相応の洞察を提供している.たとえば日本の技術転換企業は相対的に長期のプロジェクトにコミットする傾向にある.当初目的としていた技術転換が困難になった場合,新たな用途開発を行ってでも市場化を目指す傾向にあり,長期的な競争力のために比較的重い技術転換のコストを担うといえるかもしれない. 現在,次年度のより詳細な実態比較調査に向けて事例およびデータの整理と仮説の精緻化が予定通り進行中である.事例研究から得られた定性的データは,数量化された技術データ,市場データと総合され,複雑なシステム的性質を持つ現代的な産業発展・脱成熟化の過程を説明しうるモデルの構築を目指して最終的な研究成果として公表される.
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