2005 Fiscal Year Annual Research Report
企業のリストラクチャリングと個人のキャリア形成-解雇プロセスの日独比較研究-
Project/Area Number |
17730227
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
二神 枝保 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 助教授 (10267429)
|
Keywords | 企業のリストラクチャリング / 解雇プロセス / 日独比較 / 境界を超えたキャリア / 戦略的人的資源管理(SHRM) / 解雇制限法 / 高齢者パートタイム制度 / ワークシェアリング |
Research Abstract |
最近、企業のリストラクチャリングやダウンサイジングが注目されている。特にリストラクチャリングに伴う雇用調整、人員削減、解雇の問題は、今日の重要なイシューである。ドイツで企業のリストラクチャリングは進展し、その動向は日本にとって示唆に富んでいる。従って、本研究では解雇プロセスの日独比較を行うことで、これからの新しい戦略的人的資源管理(Strategic Human Resource Management : SHRM)と個人のキャリア形成を考察する。 本年度は、まず第1に、ドイツの企業のリストラクチャリングや解雇の実態を文献レビューとヒアリング調査に基づいて検討し、特に解雇制限法と高齢者パートタイム制度を考察した。ドイツには、従業員5人以上の企業を対象に解雇制限法(Kundigungsschutzgesetz)があり、勤続期間6ヶ月以上の従業員に適用される。BDAへのヒアリング調査によれば、解雇制限法の適用範囲を従業員20人以上の企業に引き上げることと、勤続期間2年以上の従業員に拡大する規制緩和の動きがある。また、1996年に高齢者パートタイム法(Altersteilzeitgesetz)が制定され、55歳以上でパートとして働く高齢者パートタイム制度がある。BASFの人事担当者によると、高齢のパートタイムに対してフルタイムの時の収入の80%以上を支払うという。この制度は、高齢者の失業を阻止する(BDA、2003)目的で導入されたが、現実にドイツの企業では、若い労働者に昇進機会を与えるため、早期退職を奨励している。研究成果は‘Eine Forschung fur Personalabbau in Unternehmen : der Vergleich zwischen Deutschland und Japan'に作成中。 第2に、日本のリストラクチャリングの実態を文献レビューとヒアリング調査によって検討し、特に日本の経営システムと解雇のあり方を検討した。また、日本のワークシェアリングの実態も考察した。研究成果は、二神枝保「企画業務型裁量労働制の職場や働き方への効果」(『裁量労働制の導入と外部効果に関する調査研究』社会経済生産性本部、2006年)である。日本では、第1次オイルショック以降、「解雇権濫用法理」が定着し、社会的規範として終身雇用が強化された。2003年に労働基準法が改正され、第18条の2に解雇権濫用法理が法律に明記された。本研究では、日本の経営システム、特に日本の企業内組合や労使関係、コーポレートガバナンス、そして出向が解雇プロセスに影響を与えていることを考察した。 第3に、リストラクチャリングが進展する中で、個人のキャリア形成について検討した。最近では、境界を超えたキャリアが広まっている。境界を超えたキャリアとは、専門的なスキル・知識を磨きながら、どの会社にも自分を縛り付けることなく、キャリアを積んでいこうとする働き方であり、インディペンデント・コントラクター(IC)、専門性の高い派遣社員、そしてマイクロビジネスの働き方がその例である。境界を超えたキャリアを形成するうえで重要なことは、コラボレーションと専門性、そしてキャリア・ヴィジョンをもつことである。研究成果は、二神枝保「境界を超えたキャリア」(『コラボレーション組織:人材と組織の新モデル』中央経済社、2006年)である。
|
Research Products
(2 results)