2006 Fiscal Year Annual Research Report
企業のリストラクチャリングと個人のキャリア形成-解雇プロセスの日独比較研究-
Project/Area Number |
17730227
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
二神 枝保 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 助教授 (10267429)
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Keywords | 企業のリストラクチャリング / 個人のキャリア形成 / 戦略的人的資源管理(SHRM) / 境界を超えたキャリア / 解雇プロセス / 解雇制限法 / ワークシェアリング / 日独比較 |
Research Abstract |
最近、企業のリストラクチャリングが注目され、それに伴う雇用調整、人員削減、解雇、職業教育・訓練は、重要なイシューとなっている。ヨーロッパ、特にドイツで企業のリストラクチャリングは進展し、その動向は日本にとって示唆に富む。本研究では解雇プロセスの日独比較を行い、これからの新しい戦略的人的資源管理(Strategic Human Resource Management : SHRM)と個人のキャリア形成を考察する。 本年度は、まず第1に、ドイツの企業を中心に、ヨーロッパのリストラクチャリングや解雇の実態を文献レビューとヒアリング調査に基づいて検討した。ドイツには、解雇制限法(Kundigungsschutzgesetz)があるが、BDA(経営者連盟)へのヒアリング調査によると、最近、解雇制限法の適用範囲に規制緩和の動きがある。また、1996年に高齢者パートタイム法(Altersteilzeitgesetz)が制定された。BASFの人事担当者によると、高齢パートタイム労働者にフルタイム時の収入の80%以上を支払う。この制度は、高齢者の失業を阻止する(BDA、2003)目的で導入されたが、実際、早期退職を奨励する面もある。さらに、ILOへのヒアリング調査によれば、SSER(Socially Sensitive Enterprise Restructuring)アプローチが注目されている。SSERは、企業が社会的責任をもってリストラクチャリング、職業教育・訓練、解雇等を行うことである。研究成果'Eine Forschung fur Personalabbau in Unternehmen : der Vergleich zwischen Deutschland und Japan'はドイツの学術誌に投稿中。 第2に、日本のリストラクチャリングの実態を文献レビューとアンケート調査によって検討し、日本の経営システムと解雇プロセスを検討した。特に、日本のワークシェアリングの実態も考察した。労働時間制度が人々の働き方、従業員の満足度、企業の生産性、競争優位に与える影響を分析した。その結果、労働時間制度が戦略的人的資源管理の視点から導入され、職務分析や人材評価、仕事の与え方等と連携している場合、企業の生産性、従業員の満足度も高いが、そうでない場合には人件費削減のみのリストラクチャリング対策として実施されると感じる管理職が多い。研究成果は、二神枝保「労働時間が働き方に与える影響」(『横浜国際社会科学研究』第12巻、第1号、2007年)。 第3に、リストラクチャリングが進展する中で、個人のキャリア形成について検討した。最近、境界を超えたキャリア、すなわち専門的なスキル・知識を磨きながら、キャリアを形成する働き方が広まっている。専門性の高い派遣社員、インディペンデント・コントラクター(IC)、そしてマイクロビジネスがその例である。境界を超えたキャリアを形成するのに重要なのは、コラボレーションと専門性、そしてキャリア・ヴィジョンである。研究成果は、Shiho Futagami"Zeitarbeiter in Japan"(Personal : Zeitschtift fur Human Resource Management, Heftll,2006)、Shiho Futagami"Emerging female entrepreneurship in Japan : A Case Study of Digimom Workers"(Thunderbird Business Review,2007)、および二神枝保「境界を超えたキャリア」(『コラボレーション組織:人材と組織の新モデル』中央経済社、2007年)である。
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