2005 Fiscal Year Annual Research Report
製品開発および部品調達における企業間協働の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
17730228
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
真鍋 誠司 横浜国立大学, 経営学部, 助教授 (10346249)
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Keywords | 自動車産業 / サプライヤー・システム / 協働 / 技術 / 製品開発 / 部品調達 |
Research Abstract |
本研究は、電子データ交換(EDI)の役割について日米自動車産業を比較することにより、サプライヤー・システムにおける協働の実態にかんする仮説の構築と検証を行ったものである。 質問票調査から得られたデータを検証した結果、まず日米サプライヤー・システムの違いについて以下の3点が明らかになった。 第1に、日本企業は米国企業よりも、サプライヤーに対して関係特殊的な投資を多く行っている。第2に、日本企業は米国企業よりも、サプライヤーから高い頻度で部品を調達している。第3に、日本企業は米国企業よりも、実際の生産により近い時点で生産計画を設定している。 次に、EDIの役割にかんして、以下の3点が明らかになった。 第1に、米国企業は日本企業よりも、EDIを利用する取引の拡大を強調している。第2に、米国企業は日本企業よりも、顧客との間でEDIによる統合を進めている。他方、日本企業は米国企業よりも、サプライヤーとの間でEDIによる統合を進めている。第3に、米国のサプライヤー・システムではEDIの統合がEDIの効果にポジティブな影響を与えているが、日本のサプライヤー・システムではそのような関係がみられない。 以上より、日本のサプライヤー・システムの方が米国のそれよりも、協働的であることが示唆として得られた。ただし、米国企業の方が、EDIの統合による効果は大きいことも明らかなった。この分析結果は、既存研究の主張とも部分的に整合性があるといえるだろう。 また、製品開発にかんしては、日本の白物家電メーカーを調査し、事例分析を行った。このメーカーの製品開発の特徴は、以下の通りである。 第1に、顧客ニーズのトレードオフに対して、技術的イノベーションによる発展的解消を目指している。第2に、技術開発において、大きすぎるともいえる目標を設定している。目標を高く設定することには、開発参加者の士気を高める効果がある。だが、効果はそれだけではない。プロジェクトで利用できなかった要素技術は残しておき、将来における別のプロジェクトで利用するのである。これは、「オーバーエクステンション(過剰拡張)」として知られる戦略の考え方に合致したものである。第3に、グループ企業の能力を結集している。この企業の開発では、研究所やデザイン本部との協働が恒常的にシステム化されている。調査対象企業における工場への研究所研究者の常駐は、その象徴ともいえるだろう。このような協働が、技術的ブレークスルーの鍵となっているのである。 これらの研究では、日本企業における部品調達と製品開発における協働の実態について明らかにした。今後の課題は、理論的な分析枠組みと仮説の構築、その検証を通じて研究を深めていくことである。
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