2005 Fiscal Year Annual Research Report
高年齢者雇用と人的資源管理システム:エイジフリー社会の実現に向けた探索的研究
Project/Area Number |
17730244
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Research Institution | Keiai University |
Principal Investigator |
高木 朋代 敬愛大学, 経済学部, 専任講師 (20383367)
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Keywords | エイジフリー社会 / 高年齢者雇用 / 人的資源管理 / キャリア管理・能力育成 / 雇用継続・転職 / 国際比較 |
Research Abstract |
本研究の目的は、エイジフリー社会の実現に向けて、企業の人的資源管理に求められる視点を検討することにある。本年度は同一企業内での高年齢者雇用と、出向・転籍を含む他社への転職の場合に焦点を当て分析を行った。 高年齢者を「年金などの社会保障を受けて生活する社会的弱者」と画一的にみなす年齢差別、いわゆるエイジズムは、欧米諸国において社会の発展とともに整備された社会保障給付が、職業人生からの引退と連動することにその起源を見出すことができる。当初は社会様式でしかなかった退職慣行が制度化し、高年齢者を「社会の依存者」と見なす差別意識が人々の心の中で強調されたと考えられる。しかし歴史的に見て、こうした高年齢者観はここ1世紀の間に作り出された一時代の社会的位相にすぎない。 エイジズムを打ち砕くひとつの方法は、働く個人が高齢期になろうとも企業から必要とされるような「雇用され続ける能力」を持つことである。その能力がどのようにして獲得されているのかを、定年到達者のキャリア分析によって考察した。その結果、同一企業内の場合も、出向・転籍を含む他社への転職の場合も、高齢期の就業を実現している者は、概して同一職能内に長期に亘って留まり、その間に担当職務に関する知識・能力を高度に蓄積していることが示された。この長期の同一職能内経験は、雇用関係が短期的に決済されがちな個別的・成果主義的人事管理よりも、ある程度長期的視点に基づく、安定的な雇用関係を土台とする人事管理の下で達成されるものと考えられる。 キャリア管理がある程度企業の裁量に委ねられている以上、高齢期を含めた一人の人間のキャリア形成や能力育成は、自助のみによって達成できるものではない。年齢差別のないエイジフリー社会の実現に向けて、法整備をはじめとする社会全体の雇用システムの再構築が求められている一方で、企業の人事管理が担うべき役割も大きいと考えられる。
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