2006 Fiscal Year Annual Research Report
小売企業にみる商品調達ネットワークの戦略的マネジメント
Project/Area Number |
17730256
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂川 裕司 北海道大学, 大学院経済学研究科, 助教授 (40301965)
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Keywords | 商品調達 / バイヤー / パワー / 信頼 / 組織間関係 / 小売業 |
Research Abstract |
まず以下に述べるように,今年度は,昨年度発見した商品調達において2つの商品調達行動が存在し,その商品調達行動においてバイヤーに求められる能力には違いがあるという仮説を検証した。2つの商品調達行動とは,つぎのものである。ひとつは「選択的商品調達行動」である。もうひとつは「革新的商品調達行動」である。 前者の選択的商品調達行動とは,短期的な関係を前提とする市場取引を通じた商品調達行動にみられる。バイヤーは複数の選択肢(商品)の存在を前提として,予算制約のなかで目標を達成しうるように調達する商品を選択する。このときバイヤーに求められる能力とは,複数の商品を商品する調達ネットワーク関係を前提としたパワーバランスの統制能力である。このパワーバランスの統制能力は,バイヤーの情報処理能力に依存する。情報処理能力が高いほど,目標を達成する可能性の高い商品調達ネットワークの構築・維持を可能とする。特に重要な点はバイヤーの情報処理能力に対する取引先の依存度であり,これがパワーバランスめ維持に影響する。 そして後者の革新的商品調達行動とは短期的な関係を前提とする市場取引ではなく,信頼をベースとした長期的な取引関係を前提とする商品調達行動にみられる。もはやバイヤーはパワーバランスの統制を期待されない。バイヤーにとって商品調達先は信頼関係にあるパートナーであり,その商品調達の前提となる代替する選択肢は他にない。問題のバイヤーはそのパー,トナーとの共同作業を通じて,共有する目標の達成を目指して努力するしかない。ゆえにバイヤーに求められる能力は信頼関係を構築し維持し,さらにはその信頼関係を高度化するために必要なコミュニケーション能力である。バイヤーはパートナーとの間で「組織間関係の連結者」となると同時に,内部組織の関連諸部門の間に立ち,「部門間関係の連結者」となる。この連結活動においてバイヤーには,高いコミュニケーション能力が求められる。 次に以上の仮説について本年度はヒアリング調査を実施した。このヒアリング調査は現時点において継続中である。ヒアリング調査の過程で,つぎのような興味深い発見があった。選択的な商品調達と革新的な商品調達では,その担当者の経験値が異なる。革新的な商品調達を行う担当者には経験値(担当経歴)が高い傾向がある。また複数の部門(営業部門におけるフロアマネジャーなど)を経験している傾向がある。
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