2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国日系企業の物流戦略と物流システム構築に関する調査研究
Project/Area Number |
17730261
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
李 瑞雪 富山大学, 経済学部, 助教授 (20377237)
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Keywords | 物流戦略 / ロジスティクスシステム / サプライチェーンマネジメント / 物流機能の内部化と集約化 / 3PL / 技術学習 |
Research Abstract |
平成17年度では、まず中国の日系企業数社を選んでケーススタディを行った。具体的に、調査対象企業が販売機能と物流管理機能の内部化と集約化を図ると同時に、マーケティング戦略とロジスティクス戦略を転換させ、現地スタッフへの物流知識移転と権限委譲、物流拠点網の見直し、現地系物流業者の起用などの取り組みによってロジスティクスシステムを構築している点に着目し、その実態と要因の解明に努めた。また、これらの日系企業では、現地市場環境や商慣行に適応可能なロジスティクスシステムの構築が競争優位の確立に貢献しているのかについて分析を試みた。 日系企業に対する事例研究をすすめると同時に、比較を通じて日系企業の物流戦略の特徴を浮き彫りするために、中国欧米系企業に対してもケーススタディを行った。調査対象となった欧米系消費財メーカーのロジスティクスシステムの構築過程およびシステム構成要素に対する考察を通じて、同社のロジスティクスシステムの特徴と効果を明らかにしている。具体的に、(1)SCMチームによる在庫統制、(2)拠点ネットワークの自社運営、(3)チャネラー統合可能な情報システムの開発、(4)巧みな自社物流と委託物流の組み合わせによる現業遂行、(5)パフォーマンス測定基準の明確化、などを中心とする取り組みは、高度なロジスティクスシステムを構築しているのみならず、同社の競争優位に大きく貢献していることは明らかになった。 こうしたケーススタディから得られた知見を踏まえて質問票を設計し、約3000社の中国日系企業に対してアンケート調査を実施している。2005年3月末現在、アンケートの回収・集計作業を行っているところである。 他には2005年度に、中国日系企業の物流システム構築にとって重要な外部要素である中国物流企業について調査研究を行った。とくに中国3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)事業者の技術学習のメカニズムを解明している。即ち、中国3PL事業者は、まず「ヒト」モードとしてのキーパーソン、「モノ」モードとしての物流情報システムを通して、それら媒体に体化されている技術にアクセスする。そして、業務執行「チーム」に技術学習の機能を付与し、「チーム」によって主体的に受託物流の運営技術を吸収(Leaning By Doing)、整理(形式化)して、浸透(社内普及)させていた。さらに、近代的な物流センターの建設・運営によって、優良な内部資源が蓄積されると同時に、技術を実践する場が形成される。受託先の限定的な多元化戦略が展開される中で、各々の顧客企業から得られたノウハウや経験を融合させ、ターゲット産業の受託物流に関する全般的な運営技術を確実に身につけていた。こうした技術学習メカニズムにより、中国の物流企業は、産業内に資源が不足しているにも関わらず短期間で業態転換を果たすことが出来たのである。
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