2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国日系企業の物流戦略と物流システム構築に関する調査研究
Project/Area Number |
17730261
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
李 瑞雪 富山大学, 経済学部, 助教授 (20377237)
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Keywords | 業務委託の"現地化" / ロジスティクスシステム / サプライチェーンマネジメント / 在庫配置の延期化 / ローコストロジスティクス / 両面戦略 |
Research Abstract |
平成18年度では、まず中国日系企業(華東地域、華南地域を中心に)を対象に行ったアンケート調査の集計と解析作業を開始した。調査結果の一部を「中国市場におけるロジスティクス戦略〜日系企業を対象とするアンケート調査を踏まえて〜」を題に、2006年度の日本物流学会全国大会で研究発表を行った。さらに、この調査結果をまとめた論文・「中国進出日系企業の物流採点〜日系企業に対するアンケート調査から〜」は『流通設計21』に2006年9月号から6回にわたり連載された。この調査により、中国日系企業は現地市場の競争環境への適応過程で、ローコストのロジスティクス指向を強めることが明らかになった。また、ローコストのロジスティクスを実現するために、多くの日系企業は二つの戦略を実行している。即ち、(1)業務委託の"現地化"戦略と在庫配置の"延期化"戦略である。 また、前年度に続き、在中国企業のロジスティクス戦略を取り巻く中国の物流環境についての調査研究を続行した。「物流を制すれば中国ビジネスを制する〜中国物流環境の実態〜」を題とする論文(『中国の投資環境〜製造業におけるヒトとモノの流れ』に掲載、富山大学極東地域研究センター2006年3月発行)は調査結果の一部を反映している。この論文では中国における物流リンクとノードの整備状況と各種物流企業の特徴や発展ぶりを考察とともに、公的な統計データおよび研究機関の調査データに依拠しながら物流産業の成長が経済全体と比べて遅れをとっている現状を明らかにした。その上で、荷主側と物流専門企業側の両サイドから物流市場の発達を阻害する要因を分析し、日系企業の採るべき戦略について提言を行った。 さらに、日系企業の戦略と比較するために、中国現地系企業を対象にフィールドリサーチを実施し、その内容はワーキングペーパー(共著)にまとめた。この作業は中国現地の大学の研究者から協力を得ながら進められた。具体的に、四川省にある中国大手家電メーカー・長虹(CHANGHONG)のマーケティング戦略、ロジスティクス戦略の変遷過程およびパフォーマンスを具に調べ、ケーススタディにまとめた。 そのほかに、「在中国日系企業の"フルセット型現地化"に関する探索的研究〜調達・販売流通戦略の構築〜」(富大経済論集第52巻第3号、共著)では,中国で製造・販売を展開している日系企業に対するケーススタディを通じて,これらの企業は日本国内既存のサプライチェーンの延長から現地市場ベースのサプライチェーンの構築への転換を行うとともに,「分散配置」(調達,R&D,製造などの機能)と「集約展開」(販売や物流などの機能)の両面攻めという戦略で環境適応可能な組織体制の構築を試みている実態を明らかにしている。
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