2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730275
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
椎葉 淳 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (60330164)
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Keywords | 利益 / 株価 / 業績評価指標 / 残余利益 / 異常利益成長 / 持続性 / 経営者報酬 / 非効率的市場 |
Research Abstract |
本研究は、業績評価指標としての利益と株価の役割を比較研究するものである。この課題に取り組むために、本年度は、利益および株価のどのような性質が、それらの業績評価指標としての効率性を決定づけているかについて検討した。また、経営者報酬を研究している識者の協力を得て、仮説についての検証可能性を議論した。他方では、実証分析を行う際に必要な株価と財務データをデータベース化し、仮説検証のための準備を行った。以下、理論的に検討した点を要約する。 まず業績指標としての利益についてであるが、研究を進める過程において、利益数値のみに会計情報を限らず、残余利益ならびに異常利益成長についても検討することが適切であるとの見解に至った。これは近年注目されている会計数値に基づく企業評価に関する研究において、Ohlson (1995)およびOhlson and Juttner (2005)がそれぞれ示したように、利益よりはむしろ残余利益あるいは異常利益成長が株主資本価値と密接に関連しているからである。そして、利益を含めこれらの会計数値に関して、各指標の分散、ならびにAR(1)などの時系列を仮定し推定することで測定される持続性といった指標に着目して、業績指標の性質を把握することが有効であるとの見解に至った。 次に業績指標としての株価についてであるが、リサーチアシスタントとして大学院生を採用し、非効率的市場において形成される株価に依拠した経営者報酬がどのような影響を及ぼすかについて、文献サーベイを行った。その結果、株価指標に報酬がどの程度依拠しているかに加えて、短期的な投資家、細部の情報まで注視しない(inattentive)投資家、ならびに市場における情報の偏在といった要因によって、業績指標としての株価の効率性が影響を受けることが明らかとなった。
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