2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730287
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
劉 慕和 日本大学, 商学部, 講師 (90349952)
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Keywords | 利益管理 / アクルーアルズ会計 / 経営者の裁量 / 不正経理 / 粉飾決算 |
Research Abstract |
海外においても日本においても,利益管理(Earnings Management)は多くの会計学者が関心を寄せた研究テーマである。近年,企業における会計上の不正行為が多発していることから,ジャーナリズムでは利益管理を不正経理や粉飾決算等と混同し,否定的にとらえる報道や記事が多数見られる。しかし,会計学者たちの見解では,利益管理は必ずしも不正経理とは限らない。たとえば,ハーバード大学のHealy教授らは,GAAPで認められた範囲内で経営者が裁量権・判断を行使し,会計政策を変更することも利益管理の一種であると考えている。利益管理のカテゴリについて,Dechow and Skinner(2000)は会計政策の性質から,保守主義会計,中立的利益,積極的会計ならびに不正会計に分けている。 一方,経営者が利益管理を行なうインセンティブとして,Giroux(2004)は以下の複数のインセンティブを指摘している。企業の決算上の利益額ではわずかな純損失となっていたり,前期の公表利益額よりわずかに低かったり,あるいはアナリストの予測利益額より低かったりした場合,経営者は利益管理を行ない,公表利益額を増加させるかもしれない。また,負債契約上,必要とされる利益額に満たしていない場合でも,利益管理が行なわれる可能性がある。一方,米国企業では,経営者の報酬が企業の財務業績と連動している場合が多いので,自らの報酬を上げるために経営者はなるべく高い利益額を公表したがるインセンティブがある。 利益管理に関する実証研究では,アクルーアルズ(accruals)を利益管理の代理変数として利用する場合が多い。というのも,このアクルーアルズは,アクルーアルズ会計(accrual basis accounting)をベースにした利益額とキャッシュ・フローとの差額であり,その計上額は経営者の判断に委ねられる部分が多々あるからである。平成18年度では,日本企業の利益管理の実態について実証的に検証する予定である。
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