2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730291
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 専任講師 (00387383)
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Keywords | 株式所有構造 / 持ち合い / 企業価値 / 残余利益 |
Research Abstract |
本年度の研究では、株式所有構造が企業の投資行動に与える影響を残余利益の面から分析すると同時に、所有構造そのものを決める内生的な要因を理論的に考察した。まず、営業資産の増減は1期ラグをつけた残余利益率の大きさに比例することが明らかにされた。基本的に確定した業績が期待を下回れば、事業の縮小が図られることが望ましい。しかし、他企業との支配関係に応じてサンプルを二分すれば、そうした関係が強固な企業では、事業の縮小に向けた圧力が働きにくいことが確認された。そこでは残余利益に対する投資の弾力性が、統計的に有意な数値をとらず、利益というわかりやすい成果の指標と無関係に事業規模が決定されていることがわかった。ただ、ここまでの分析は2001年までの期間に限定されるので、連結会計基準の変更がグループ・ベースでの企業経営のあり方を大きく変化させた1998年以降のサンプルを組み入れれば、異なる結果が析出されるかもしれない。 他方、企業が所有構造を内生的に選択する可能性をモデルに含めないと、現実の一面しか捉えていないことになろう。先行研究では企業間競争の程度から、戦略的に株式の持ち合いを選択するモデルが提示されている。そこでは、生産・販売する製品が補完的か代替的かで、資本関係を維持するかどうかが決まる。このモデルを日本企業に適用する場合、支配権の価値を変数としてどのように外挿するかが問題となる。たとえ製品市場で競合関係にある企業でも、他企業からの買収を防ぐ手段として所有構造を変化させる可能性があるからである。企業価値と株主価値が異なる意味をもつのも、株式を持ち合う企業にとっては持分の増価以外に利益を獲得する源泉が用意されているからに他ならない。支配権の価値を明示的にモデルに反映させることが今後の課題である。
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