2005 Fiscal Year Annual Research Report
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17730297
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 晋作 東北大学, 大学院・文学研究科, 教務補佐員 (60374873)
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Keywords | 知識社会学 / アファーマティヴ・アクション / ダニエル・ベル / ダニエル・P・モイニハン / ネイサン・グレイザー / 結果の平等 |
Research Abstract |
本研究は、まず合衆国におけるアファーマティヴ・アクションの制定過程を歴史的に分析し、それを成立せしめた経済的・政治的・社会的要因を探った。次にこうしたアファーマティヴ・アクションの制度化に関する知識人の言説分析をおこなった。ここで扱った知識人とは、反アファーマティヴ・アクションの急先鋒と理解されているネイサン・グレイザー、ジョンソン政権内において福祉政策を推進しようとしたダニエル・P・モイニハン、新保守主義の理論的先駆者とみなされてきたダニエル・ベル、さらに公衆にイデオロギー的問題の分析を提示し続けたS・M・リプセット、I・クリストル、D・リースマンといったニューヨークを拠点に活躍した知識人たちである。言説分析の結果、反アファーマティヴ・アクション派とみられた知識人も含めて、アメリカ社会の理念である「機会の平等」とエスニック・マイノリティの救済という「結果の平等」との微妙なバランスを確保する方策を数多く提示していることが明らかとなった。さらに公刊資料には現れない彼らのエスニック・アイデンティティに基づいた公正観を考察すべく、合衆国に渡航し、彼らの残した未公刊資料を収集・解析した。特にダニエル・ベルとその息子のデイヴィッド・ベルにインタビューをおこなうことに成功し、アファーマティヴ・アクション評価について、貴重な証言を得た。こうした成果を日本社会学会において「ダニエル・ベルの社会理論と現代アメリカ社会」という論題で口頭報告し、さらにWASPの知識人、タルコット・パーソンズとベルとのアファーマティヴ・アクションを含むアメリカ社会認識にかんする比較を試み、「ダニエル・ベルの『資本主義の文化的矛盾』論と現代アメリカ社会--パーソンズ社会学との比較を通して」という論稿を日本社会学史学会機関誌『社会学史研究』に投稿中である。
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