2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730297
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 晋作 東北大学, 大学院・文学研究科, 専門研究員 (60374873)
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Keywords | アメリカ / 人種 / エスニシティ / 知識社会学 / 差別 |
Research Abstract |
合衆国における現在のアファーマティヴ・アクションの実施状況を実証的に明らかにした。合衆国のなかでも特にエスニシティの多様性に満ちているカリフォルニア州、ニューヨーク州を対象として、前者ではカリフニォルニア大学、後者ではコロンビア大学を具体的な事例として、制度の運用状況を分析した。その結果、最高裁、立法府、連邦政府、州政府など様々な領域での賛否両論に翻弄されながらも、アファーマティヴ・アクションの制度化が図られていることが明らかとなった。すなわち割当制は、バッキ判決以降、採用されなくなっているとはいえ、エスニシティを合否判定基準の一要素として加え、しかもその要素が合否の決定的要素とならないように柔軟に判定することが考慮されている。 こうした現状と対照させて1970年代の導入当初からアファーマティヴ・アクション論争に積極的に加わっていったユダヤ系社会学者の理論的業績を考察した。彼らの残した公刊・未公刊資料、往復書簡、存命中の知識人へのインタビューに基づいて、ユダヤ系の「集合的記憶」との関連で、言説分析をおこなった。ここでいう「集合的記憶」とは、ベル、グレイザー、リプセット、クリストルなどが参加したラディカリズムへのコミットとその批判的継承である。彼らは、そうした視点から上記のようなアフリカ系中産階級の階層上昇を援護する柔軟なアファーマティヴ・アクションの運用を肯定的に評価した。さらに大学進学のアスピレーションすらもてない「アンダークラス」に対する貧困救済策が同時並行的に必要である、と主張した。本年度の研究によって、アファーマティヴ・アクションの一定の実質的効果と、その対象から外れる貧困層の問題とが明らかとなった。
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