2006 Fiscal Year Annual Research Report
経済危機後の韓国における労働市場と階層構造の変容に関する研究
Project/Area Number |
17730301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有田 伸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30345061)
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Keywords | 韓国 / 労働市場 / 社会階層 / 社会学 / 経済危機 / 労働移動 |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は、経済危機後の韓国社会における労働市場の変化とそれが社会階層構造にもたらしている影響を比較社会学的観点から考察していくことにある。平成18年度にはこのために、(1)経済危機後の雇用の柔軟化の実態、(2)労働移動の機会構造、(3)これらの変化がもたらす社会階層構造の変容、に関して実証分析を行った。 (1)まず経済危機後の雇用の柔軟化の実態に関しては、さまざまな官庁統計データを用いながら、韓国における非正規雇用の実態を明らかにし、また日本の事例と比較することで、その「韓国的特徴」の抽出を試みた。 (2)さらに、近年の労働市場の変化を捉える上でもっとも有益な資料である韓国労働パネル調査(KLIPS)データに対してイベントヒストリー分析を施す形で、経済危機後の労働移動機会の構造と性格について検討した。ここでは特に、自営業部門への移動と非正規雇用への移動に着目し、それぞれの移動メカニズムを明らかにした。 (3)また、これらの成果を踏まえながら、韓国における社会階層構造の変容について考察し、これまで研究代表者が行ってきた教育機会の階層間格差に関する議論との接合を試みた。 これらの実績を生み出すにあたり、研究代表者は、米国出張等を通じて新たに習得するに至った統計技法を積極的に用いており、このため、より踏み込んだ形のデータ分析が可能になっている。 以上はすべて当初の研究計画とほぼ合致するものであり、本研究は順調に進んでいるものと評価されうる。
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