2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における社会的記憶の全体像-1・17神戸を中心に
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17730308
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今井 信雄 関西学院大学, 社会学研究科, COE専任研究員 (60379485)
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Keywords | 社会学 / 災害 / 記憶 |
Research Abstract |
今年度は社会学における記憶研究の位置を明らかにするため、災害や戦争に関する文献、資料の読解を行いつつ、「地域社会学」「都市社会学」「宗教社会学」などのそれぞれの分野における「記憶」の領域の確定をすすめた。また、阪神・淡路大震災被災地のフィールド調査を引き続き行いつつ、新潟県中越地震の被災地に赴き、当該地域の集合的な復興観について参与観察を行った。 それらをふまえたうえでの、今年度の具体的な研究成果は下記の通りである。 ・「社会調査における制御可能性と不可能性」(関西学院大学先端社会研究編集委員会編『先端社会研究』第3号特集「場所と社会調査」掲載論文) 本論文では社会調査がマニュアル化され制度化されていくなかで、震災の記憶が、ある時/ある場所に創発する状況を論じた。マックス・ウェーバーの、合理的理解-追体験的理解の概念を用いることで、従来の調査論において想定されなかったような、語られなかった記憶を捉えることができるということを明らかにした。 ・「分裂する天蓋--阪神淡路大震災の慰霊・追悼のかたち」国際宗教研究所編『現代宗教2006』掲載論文(未刊行・印刷中) 本論文は、ピーター・バーガーの『聖なる天蓋』にある「天蓋」というレトリックをタイトルに援用した。それはつまり、阪神・淡路大震災のあと、被災者たちは、自分を守ってくれる聖なる枠組みを構築していくのだが、それはもはやひとつの「天蓋」ではなく、いくつもの天蓋を形成せしめてきている、ということをあらわしている。震災のモニュメント、被災地の慰霊/追悼事業、ツーリズム……など、消費社会のなかの「震災」は、多様なかたちで分裂し、記憶を形成するのである。
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