2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における社会的記憶の全体像-1・17神戸を中心に
Project/Area Number |
17730308
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
今井 信雄 高崎経済大学, 地域政策学部, 講師 (60379485)
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Keywords | 社会学 |
Research Abstract |
本研究は1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災における「1・17神戸」の記憶を核として、他の災害・事故・戦災の記憶の位置についても俯瞰しうるような、社会的記憶の全体的枠組みを構築することを目的とする。すでに阪神・淡路大震災は社会的な記憶として「現代」から「過去」へ移行してしまったように思われる。本研究では、過去の出来ごととして語られる震災を、現在の出来ごととして記述し、そこから現代社会の記憶編成を浮き彫りにする。 18年度は、阪神淡路大震災の記念事業に関する資料収集、雲仙普賢岳災害の記念施設関係者への聞き取り調査および資料収集、福岡県西方沖地震の記念施設に関する資料収集を行い。そのほか社会学関連の記憶論の整理、とりわけ都市社会学や自我論および心理学における記憶論との関係性について検討した。 研究成果としては、まず「宗教と社会」学会第14回大会テーマセッション「災害と救い」において、「一・一七以降---震災経験の読み替え、消費社会、救い」と題した報告を行った。本報告では1995年1月17日以降のふたつの潮流を指摘し、そこからこぼれ落ちる震災の記憶を「救い」という観点から再考した。ふたつの潮流とは、震災経験が「科学的」知に読み替えるかたちで記憶されているということ、そして、消費社会という現代的潮流の中で記憶が構成されているということ、である。 次に、『社会学ベーシックス』(第1巻)での「記憶と社会」について執筆分担した。フランスの社会学者モーリス・アルヴァックスの「集合的記憶論」を解説する本論文では、アルヴァックスのバイオグラフィーなども参照し、アルヴァックスが歴史学者や心理学者との共同作業を経ることで、集合的記憶論を展開したことを指摘した。 そのほか、集合的記憶論を援用した研究出版物に対する書評も行った。
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